東洋電機製造は,京阪電気鉄道の協力のもと,フルSiCモジュール(SiC MOSFET+SiC SBD)を適用したVVVFインバータ装置を開発し,実際の車両への試験搭載と稼働状態情報の収集・評価を行なった.
試験搭載は,京阪13000系の13024編成(7両)の大阪方先頭車(13074号車)において,VVVFインバータ装置のSi-IGBTパワーユニットをフルSiCモジュール適用パワーユニットに置換えるとともに,主電動機も開放形誘導電動機から全閉内扇形誘導電動機に変更して,営業運転時の稼働状態情報を収集・評価した.
なお,車両性能については回生ブレーキ領域の拡大などの変更は行なわず,フルSiCモジュール適用による小形・軽量化への寄与を立証することに主眼を置いた.
VVVFインバータ装置の評価にあたっては,先に試験運用を開始した「車両状態監視システム」(鉄道ニュース2023年2月5日掲載記事参照)を活用し,稼働状態情報をクラウドサーバー上に蓄積するとともに,データ分析を行なった.
フルSiCモジュールを適用したことで冷却器の小形化が可能となり,従来のSi-IGBTを用いたパワーユニットよりも大幅な小形・軽量化が可能となった.現行パワーユニットと比較した場合,重量比で約56%減,体積比で約66%減を達成している.
営業運転状態の検証は,「車両状態監視システム」で収集された稼働データを分析することで行なわれた.評価指標として,冷却器の最大発熱量(W)を用いて,設計段階の推定値と車両状態監視システムで収集された現車データを比較することにより,設計の妥当性を確認した.
分析結果(表1)から,実運用データが設計推定値相当の発熱量であることが確認され,計画通りの性能が得られていることを確認したことから,主回路半導体にフルSiCモジュールを適用することで,発熱量の低減が図られ,VVVFインバータ装置の小形・軽量化へ寄与することが確認されている.
画像はすべて東洋電機製造ニュースリリースから