近鉄グループホールディングスでは,新「近鉄グループ経営計画」を策定したと発表した.
同グループでは,今後の事業環境について,大阪・関西万博の開催,大阪・夢洲への統合形リゾート(IR)の誘致などが控えており,同グループの持続的な成長を目指すため,グループの15年後(2033年度)の目指す姿を定めた長期目標と,その長期目標にもとづく最初の5ヵ年(2019〜2023年度)の具体的な事業計画を定めた中期計画を取りまとめた.
重点戦略として,新3大プロジェクト(万博・IR関連事業,上本町ターミナル事業,伊勢志摩地域の活性化事業)を推進するとともに,「沿線強化」「新規事業・事業分野の拡大」「事業エリアの拡大」の3つの基本戦略にもとづき,成長戦略を積極的に展開する.
新3大プロジェクトのうち,万博・IR関連事業では,夢洲から近鉄沿線への直結アクセスを整備し,夢洲からの誘客を通じた交流人口の拡大を図る.また,特色・魅力ある車両が夢洲に乗り入れることで,夢洲における近鉄グループのシンボルとする.これらの実現に向けては,第三軌条と架線の2種類の集電方式に対応した車両の開発,けいはんな線から奈良線へ乗り入れるための渡り線の新設を検討する.上本町ターミナル事業は,同グループの鉄道・バスターミナル,商業施設,宿泊施設,エンターテイメント,オフィスビルなどの施設が集積する上本町の立地を活かし,万博・IRを契機に,今後増加が見込まれる国内外からの利用客に対応するための交通・観光情報拠点を目指すターミナル再開発の検討をする.
沿線強化事業では,より魅力ある車両を導入し,付加価値のある移動空間を提供することで,交流人口の拡大を目的に,特急サービスの充実・強化を図る.名阪特急にはサービスのさらなるブラッシュアップとして,2020(令和2)年春に新形名阪特急を72両(6両×8編成・8両×3編成)導入する.また,継続的な観光列車の検討として,乗ることが目的となるような観光列車を戦略的に投入し,大阪・京都・名古屋に訪れる観光客を沿線の観光地へ誘客や,沿線地域の活性化に貢献する.さらに,京都線—橿原線—吉野線を対象としたフリーゲージトレインの開発を進める.これによりレール幅の異なる京都・橿原線と吉野線を経て,吉野駅まで直通運転することが可能となり,首都圏からの旅客や訪日外国人の利便性と,特急ネットワークの価値向上を図る.今後は,国土交通省とも相談し,鉄道車両メーカーなどととも実用化に向けた検討を進めていく.
また,沿線主要駅の整備として,河内小阪駅・桑名駅・大和西大寺駅の3駅を対象に,駅前再開発などを推進する.河内小阪駅前では保有資産の建替え,桑名駅と大和西大寺駅では駅と周辺の一体的な再開発を推進することで,人口減少,高齢化にも対応できるコンパクトシティづくりを目指す.
駅構内の安全対策では,引き続き,プラットホームでの転落事故を未然に防ぐため,新形ホームドア(縦形上昇式)の研究・開発など,駅や車両特性に応じたホームドアの研究開発を進める.あわせて,駅構内に設置したカメラの映像など,映像解析技術を活用した安全対策の研究を進める.