東京地下鉄(東京メトロ)は三菱電機と共同で,鉄道用「同期リラクタンスモーターシステム(SynTRACS®)」について,営業運用による長期評価試験を行ない,一定の省エネ効果が確認できたと発表した.営業運用により,鉄道用の同期リラクタンスモーターの省エネ効果を定量的に確認したのは,世界で初めてとなる.
同期リラクタンスモーターは,回転子鉄心内の磁気抵抗差によって生じる磁極との相互作用で発生する「リラクタンストルク」で駆動するもので.鉄道車両に広く採用されている誘導モーターと比較して,回転子の発熱損失が小さく,効率や質量特性に優れることが特徴である.
両社では,省エネ性能が高い「同期リラクタンスモーター(SynRM)」と,それを制御するインバーターで構成される「同期リラクタンスモーターシステム(SynTRACS®)」を,日比谷線13000系1編成のうち2両に試験搭載し,夜間走行にて実証試験を行ない,実際の鉄道車両で運用可能であることを確認している(鉄道ニュース2021年6月25日掲載記事参照).
この13000系において,2021(令和3)年12月27日(月)から2022(令和4)年2月12日(土)までの間,新たに営業運用における消費電力量評価などの長期評価試験を行なった.今回の長期評価試験では営業運用におけるSynRM搭載車両の積算電力量を測定し,原単位(電車を単位距離動かすために必要な電力量を示す値)を算出した.本システムの省エネ効果を確認するため,南北線9000系大規模リニューアル工事車両に搭載されている誘導モーターシステムと比較して,約18%の省エネ化が実現可能であることを確認した.
今後は,世界最高レベルの効率を実現可能なシステムのひとつとして,新造車両や大規模リニューアル工事車両へ本システムの導入を可能とすることで,鉄道車両のさらなる省エネ化に貢献するとしている.
写真・画像はいずれも東京メトロ提供