東京地下鉄(東京メトロ)は,三菱電機と共同で,鉄道用「同期リラクタンスモーターシステム」(SynTRACS)の実証試験に成功し,省エネ効果などを確認したと発表した.同期リラクタンスモーターによる鉄道車両の営業線上の走行は世界で初めてとなる.
「同期リラクタンスモーター」は,回転子鉄心内の磁気抵抗差によって生じる磁極との相互作用で発生する「リラクタンストルク」で駆動するもので,鉄道車両に広く採用されている誘導モーターと比較して,回転子の発熱損失が小さく,効率や質量特性に優れることが特徴である.
両社では省エネ性能のさらなる向上を目指し,「同期リラクタンスモーター」(SynRM)と,同モーターを制御するインバータで構成されるシステムを日比谷線13000系の7両中2両に搭載.2021(令和3)年3月24日(水)から4月14日(水)までの計12夜間において実証試験を実施した.
試験では,産業用機器などで使用されている「同期リラクタンスモーターシステム」について,加速度・減速度をはじめとした各種性能試験を実施.本システムが鉄道車両の制御システムに適用可能であることに加え,これまでの三菱電機製モーターの最高効率が95%であったところ,97%以上のモーター効率があることを確認した.
また,モーターは定格出力250kW,重量は562kgであり,従来のモーターと比較して出力あたりの大幅な小形化も達成したとしている.これまで高出力化が困難であった同期リラクタンスモーターであるが,鉄道車両の走行を可能としたのは世界で初めてとなる.
今後は本格的な運用に向けて,さらなる消費電力量評価など長期にわたる評価試験を実施する予定.
写真・画像の一部は東京メトロ提供