<鉄道ファン誌連動 特別企画>DMVに未来の鉄道を感じて

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2022年3月18日掲載
DMVに未来の鉄道を感じて

海部川を渡るDMV931.阿波海南—海部

DMV(デュアル・モード・ビークル)は鉄道とバスを掛け合わせたもので,お互いの良い部分を高め,足りない部分を補う乗り物.今後の鉄道にとって,とくに地方の閑散区間には大きな影響を与えるのは間違いない.今回の取材ではDMVの魅力をはじめ,車両や施設について詳しく紹介したい.

DMVに未来の鉄道を感じて

海部駅に保存されているASA-101気動車.1992年の阿佐東線開業時から運転されていた車両の一つ.2020年11月で営業運転を終了.

[1]DMVの登場
■DMV導入まで
車体が少し浮き上がり,振動もほとんど感じることなく,DMVはすーっと線路を走り出した.鉄道に乗っているというよりも,先ほどまで走っていた道路を走るバスに,まだ揺られているような錯覚に陥る.だが,前方には確かに線路が続いている.これが鉄道車両なのか?
 2021(令和3)年12月25日,阿佐海岸鉄道・阿佐東線に日本初のDMVが導入された.線路と道路の両方を走れる「夢の乗り物」で,乗り換えなしで移動できるうえ,災害時にはそのポテンシャルを活かし,交通機能の確保,インフラ部分での救援が可能である.
 そもそも,なぜ阿佐東線にDMVを導入したのか?同社の沿線には太平洋を望む美しい景観をはじめ,お遍路などの観光客も多い.もともと阿佐東線は阿佐線として,徳島から室戸を経由し,高知と結ばれる予定の路線として建設工事が進められていた.だが,1980(昭和55)年の国鉄再建法の施行によって,赤字が予想される区間として工事途中で計画が中止になった.
 しかし,地元の人たちの強い想いによって,県や沿線の各自治体が出資する第三セクターとして阿佐海岸鉄道が設立された.そして,海部(かいふ)から甲浦(かんのうら)までの工事が再開され,1992(平成4)年には阿佐東線が開業した.しかし,沿線の高齢化や少子化,過疎化にともない,利用者数は著しく減少した.開業当初は年間17万人を超えていた利用者も,2010(平成22)年度には4万人を割っていた.
 そんな状況のなか,乗客の減少を食い止め,路線の維持費を極限まで抑えるという課題を解決するために導き出された答えが「DMV」だった.
 DMVであれば阿佐東線の既存の設備を活用して,大規模なインフラの整備が不要である.市販のマイクロバスを改造しているため,通常の鉄道車両の製造に比べて製造費用を抑えられるうえ,燃料費や保守費用も削減できる.点検作業の手間や費用も少なくなるなど,低コストで運行・維持できる.さらに,DMVは「地域の公共交通」としての役割のほかに,「未来の乗り物」として,多くの観光客を集められるのだ.

DMVについては,阿佐海岸鉄道WEBサイトをご覧ください