JR東海と一般社団法人日本アルミニウム協会などは,2020(令和2)年7月1日(水)から営業運転を開始する「N700S」において,荷棚などの部品に,700系・N700系の廃アルミニウム材料を素材として再利用する「アルミ水平リサイクル」を実現したと発表した.安全性が重視される高速鉄道事業において,運転車両に水平リサイクル部材が実装されるのは,世界で初めてのこととなる.
アルミニウムは添加する金属によってさまざまな種類のアルミ合金を作ることができ,アルミに添加材としてマグネシウムとシリコンを混ぜた合金は「6000系/番台」,亜鉛とマグネシウムを混ぜた合金は「7000系/番台」と呼ばれている.鉄道分野では軽量化のため車両などへのアルミニウムの使用率が高まってきているが,部位により使用されるアルミ合金種が上記のように異なることから,スクラップ時の材料選別が難しく,これまで廃車両から作られた再生アルミニウムでは,新しい鉄道車両用材料としての品質を確保することが困難となっていた.
「N700S」では,700系・N700系の廃アルミニウム材料から特定の合金種(6000系/番台)を抽出し,三協立山が元素材(ビレット)の鋳造・精製・成形押出を担当.その後,日本車輌製造や日立製作所で車両の内装部品として取り付けられている.車両がJR東海に引き渡され,車両運用を行なった後は,車両解体時にアルミ合金をハリタ金属で選別を行ない,再び三協立山が元素材(ビレット)の鋳造・精製・成形押出を行なう.
このリサイクルには,2014(平成26)年度から経済産業省実証事業や,NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業開発機構)事業として取り組んだレーザによるアルミ合金の選別技術(LIBSソーティング)が採用されている.日本アルミニウム協会はその委託先として取り組み,2016(平成28)年から2018(平成30)年度には協会内に「アルミ車両の水平リサイクル推進委員会」を発足させ,LIBSソーティングプロセス認証と再生材アルミニウム合金の規格が日本アルミニウム協会規格として制定されている.
各社では,この新幹線アルミ水平リサイクルシステムと技術の高度化を実現し,適用部材の拡大など,さらなるリサイクルの高度化を目指すとしている.
特記以外の画像は,三協立山(三協マテリアル)のニュースリリースから