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鉄道総研,車輪フランジ部の摩耗を低減する車輪摩擦材「踏面調整子」を開発

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2020年3月21日掲載
鉄道総研,車輪フランジ部の摩耗を低減する車輪摩擦材「踏面調整子」を開発

公益財団法人鉄道総合技術研究所(以下:鉄道総研)は,車輪踏面部の粘着改善と車輪フランジ部の摩耗低減の機能を併せ持つ車輪摩擦材「踏面調整子」を開発したと発表した.

 鉄道の車輪にはレールと常に接触する踏面部(図1(A))と,曲線部区間でレールと接触し脱輪を防ぐためのフランジ部(図1(B))があるが,踏面部は車輪の空転や滑走を防ぐために適度な粗さがあり滑り難いこと(粘着性),フランジ部は曲線区間でレールに接触しながら走行するため,摩擦抵抗を下げて滑り易くし摩耗を低減すること(潤滑性)が求められている.

鉄道総研,車輪フランジ部の摩耗を低減する車輪摩擦材「踏面調整子」を開発

 現在,踏面部へ粘着性を付与するために踏面研摩子(図2①)が,またフランジ部へ潤滑性を付与するために,フランジ塗油装置(図2②)がそれぞれ用いられている.車輪に求められるこれらの性能を付与するためには,2種類の異なる装置が必要となる.そこで,鉄道総研では材料技術研究部摩擦材料研究室が中心となり,一体でこれらの機能を併せて車輪に付与できる車輪摩擦材「踏面調整子」を開発した.
 「踏面調整子」は,まず研磨材と潤滑材を一体成形するために,従来の踏面研摩子と同じ熱硬化性樹脂の基材を用いた固体潤滑材を開発した.一体成形後の踏面調整子(以下:開発品)の潤滑性能は,おもに二硫化モリブデン(MoS2)によるもので,フランジ部に潤滑性,踏面部に粘着性を同時に付与する機能のほか,取付部の寸法や構造は,従来の踏面研摩子と同一であり,互換性がある.また開発品は,摩耗する速さが従来の踏面研摩子と同程度で,交換周期も従来品と変わらない.さらに,従来のフランジ部を潤滑する装置は不要となるほか,強度上の弱点部となり得る固体潤滑材と踏面研磨材の境界部分においても,踏面研磨材に対する衝撃強度の基準値(2.0kJ/m2以上)を満たすものとなっている.

鉄道総研,車輪フランジ部の摩耗を低減する車輪摩擦材「踏面調整子」を開発

 開発品の潤滑性と粘着性を確認するために,フランジ部の摩耗量が多い振子式特急車両に開発品を搭載し,走行試験を行なった.試験では,従来品(踏面研摩子)と開発品を同形の車両に搭載し,フランジ部の摩耗率(走行距離10000kmあたりの車輪フランジ部の摩耗量:mm)を比較したところ,摩耗率は,従来品(潤滑性能なし)を搭載した車両と比べて開発品を搭載した方が約45%低く,開発品の潤滑性が確認できた.また走行試験中は,開発品を搭載した車両でも,車輪とレールの摩擦力が低下し滑走したときに生じる損傷(フラット)が見られなかったことから,開発品が従来品と同等の粘着性能を有することが確認された.この結果から,開発した踏面調整子を用いることで,車両やレールのメンテナンスの軽減が実現すると期待されている.
 なお,開発品はJR九州の883系・885系車両の一部に試験的に搭載されている.また開発品で用いた技術の一部は,上田ブレーキ株式会社と共同で特許を出願している.

写真・資料はすべて鉄道総研のニュースリリースから