▲IGRいわて銀河鉄道 芥堰橋梁(IGRいわて銀河鉄道提供)
岩手県教育委員会生涯学習文化財課は,文部科学大臣の諮問機関である文化審議会が,県内に所在する11件の建造物を登録有形文化財(建造物)に登録するよう答申する予定であることを発表した.今回の登録により,岩手県内の登録有形文化財(建造物)の総数は,今回分を含めて122件に達する見込みである.
今回答申の対象となったのは,すべてIGRいわて銀河鉄道が所有する橋梁およびトンネル施設である.これらの多くは1891(明治24)年の日本鉄道開業当初から現存しており,煉瓦造りのアーチや精緻な石積みなど,往時の鉄道景観を今に伝える貴重な土木遺産となっている.
▲IGRいわて銀河鉄道 松川橋梁(IGRいわて銀河鉄道提供)
盛岡市に位置する「芥堰(あくたぜき)橋梁」は,1891(明治24)年建設の標準的な煉瓦造アーチ橋であり,その約1km北方には,石造橋台と戦後の輸送力増強を物語る鋼製桁を組み合わせた「松川橋梁」が架かる.同じく盛岡市の「松川避溢(ひいつ)橋梁」は,湾曲する河川からの溢水を処理するために設置された半円アーチ橋で,地域の歴史的景観に寄与している.
▲IGRいわて銀河鉄道 旧鳥越隧道(IGRいわて銀河鉄道提供)
岩手町にある「第五北上川橋梁」は,明治期の精緻な石造橋台に戦後のシンプルな上路プレートガーダーを載せた構造が特徴である.
一戸町では,底部に補強のインバートを備えた「嶽川(だけかわ)橋梁」や,小ぶりながら重厚な外観を留める「袖ノ沢橋梁」,沿線最大のスパンを誇る「第四小繋川橋梁」といった多彩な煉瓦造構造物が選ばれた.また「旧鳥越隧道」は,煉瓦造馬蹄形の単線断面を今に伝えており,建設当時は全国有数の規模を誇ったトンネルに相応しい,堂々たる構えを残す.
▲IGRいわて銀河鉄道 第九馬淵川橋梁(IGRいわて銀河鉄道提供)
二戸市では,明治期の重厚な橋台と戦後の軽快な橋脚が対比的な景観を成す「第九馬淵川橋梁(上り線)」と,これに並行して架かり戦後の複線化を象徴する「第九馬淵川橋梁(下り線)」,さらに精緻な乱積みの翼壁を持つ「沢内川橋梁」が答申予定となっている.
▲高千穂橋梁(文化庁ニュースリリースから)
岩手県外においても,明治期の面影を今に伝える橋梁から地域の象徴として親しまれる駅舎まで,多様な鉄道構造物が選出されている.
宮城県利府町では,東北本線の利府—松島間に築かれた「旧東北本線藤田川(ふじたかわ)橋梁」が選出された.1890(明治23)年建設の煉瓦五枚厚のアーチ構造を持ち,「山線」の名で親しまれた路線の一部として開業当初の景観を今に伝えている.岐阜県養老町にある養老鉄道の「養老駅本屋」は,1919(大正8)年に建設された和風基調の駅舎であり,屋根に設けられたドーマー窓などの洋風意匠が特徴的である.
岡山県新見市の「JR姫新線 岩山駅駅舎」は1929(昭和4)年に建設された木造駅舎で,正面の切妻造車寄や,後に集会所となった和室を備えており,製炭で栄えた地域の歴史を物語っている.宮崎県高千穂町では,1971(昭和46)年に建設された「高千穂橋梁」が選ばれた.岩戸川下流の深い渓谷に架かる同橋は,水面からの高さが105mの鉄道橋として全国一の高さを誇り,雄大な鉄道景観を形成している.
これらの構造物は,いずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」などの基準を満たしており,地域の歩みを象徴する文化財として次世代へ引き継がれることとなる.正式な答申は,2026(令和8)年3月26日(土)に開催される文化審議会文化財分科会の審議・議決を経て行なわれる予定.














