鉄道ファン2026年5月号(通巻781号)
『鉄道ファン』2026年5月号
2026年3月21日発売
定価1300円(税込)

JR東海,2026年度の重点施策を決定

JR東海 N700S量産車

写真:JR東海N700S量産車  目黒義浩撮影  小田原—熱海間にて  2020-10-25

JR東海は,2026(令和8)年度の重点施策を発表した.

JR東海,2026年度の重点施策を決定

▲大規模改修工事

 同社は,鉄道の原点である安全確保を最優先としつつ,労働力人口の減少や生活様式の変化といった環境変化に対応するため,AIやICTを活用した「業務改革」と,新しい発想による「収益の拡大」を経営の柱に据える.
 2026年度の設備投資額は連結で7780億円,単体で7180億円となる.このうち中央新幹線関連を除いた単体ベースの投資額3510億円のうち,約7割にあたる2440億円を安全関連投資に充当する.
 東海道新幹線では全線への敷設を目指す脱線防止ガードについて,2026(令和8)年度に約55km整備し,在来線においても高架橋柱の耐震化や指令設備などへの浸水対策を進める.また,車内防犯カメラの整備を進めるなど,ハード・ソフトの両面からセキュリティ対策を強化する計画である.

JR東海,2026年度の重点施策を決定

▲新形特急車両385系量産先行車のエクステリアイメージ

JR東海,2026年度の重点施策を決定

▲新形式普通車両HC35形のエクステリアイメージ

 輸送面では,東海道新幹線において1時間に最大13本の“のぞみ”を運転できるダイヤを活用し,需要に応じた弾力的な列車設定を行なう.在来線についても,“しなの”、“ひだ”などの特急列車について,需要にあわせた弾力的な増結や増発を行なう.
 車両面では,新たな営業車検測機能を有する編成を含めて,N700Sを2026(令和8)年度に7編成投入するほか,在来線では,特急“しなの”向けの新形特急車両385系量産先行車の新製や,ハイブリッド方式の新形式普通車両HC35形の設計を進める.

JR東海,2026年度の重点施策を決定

▲定位置停止制御(TASC)の導入による効果

 自動運転の導入に向けては,東海道新幹線の全駅・全営業列車において定位置停止制御(TASC)の運用を開始し,停止位置精度の向上とダイヤの安定化を図る.これは将来的な自動運転レベル「GoA2」の導入に向けた先行ステップと位置づけられている.「GoA2」とは,運転士が乗務した状態で列車を起動させ,緊急時の停止操作や避難誘導などを行なう形態を指しており,システムが加速や減速を自動で行なうことでさらなる安全性と効率性の向上を目指す.

JR東海,2026年度の重点施策を決定

▲名古屋駅2番線ホームに設置する可動柵のイメージ(写真は5番線ホームに設置済の可動柵)

 在来線では,名古屋駅2番線ホームへの可動柵設置に向けた設計を進めるとともに,刈谷駅でホームの拡幅・可動柵設置等の工事を進める.駅におけるエレベータやバリアフリートイレの設置等,バリアフリー設備の整備について,国・関係自治体と連携しつつ取り組む.
 「お客様サポートサービス」の導入駅を拡大するとともに,2027年春のTOICAエリアの拡大と特急“南紀”のチケットレス乗車サービスの開始に向けた準備を進める.

JR東海,2026年度の重点施策を決定

▲新しいL0系改良型試験車(M10)(先頭から2両目)

 中央新幹線プロジェクトについては,品川—名古屋間の総工事費増加の見通しを踏まえ,プロジェクト管理機能を強化した上で早期実現を目指す.山岳・都市部トンネルや駅建設などの土木工事を精力的に進める一方,最大の懸案事項である南アルプストンネル静岡工区については,引き続きトンネル掘削工事の早期着手に向けて取り組む.同社は大井川の水資源保護に関する説明会を開催するなど,地域の理解と協力を得られるよう真摯に地域との連携を深めていく.
 技術面では,超電導リニアのブラッシュアップを加速させる.新しいL0系改良型試験車(M10)を活用した技術開発などにより,営業車両の仕様策定や設計の深度化を進める計画である.この新形試験車は,車体表面へのリブレットフィルム適用による環境負荷低減や,高温超電導磁石専用の設計といった特徴を持つ.あわせて,高温超電導磁石の一層のコストダウンと安定運用の検証を推進し,保守作業の効率化を図る.

JR東海,2026年度の重点施策を決定

▲データ・画像分析技術を活用した技術開発の例(東海道新幹線車両の外観検査装置の開発)

 持続的な成長に向けて,技術開発と海外への事業展開を加速させる.DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として,AIや画像分析技術を用いた東海道新幹線車両の「ボルト緩みの自動判定」など,検査・保守の高度化・省力化を推進する.さらに,台湾におけるN700Sをベースとした新形車両導入への技術コンサルティングや,米国でのプロジェクトなど,日本型高速鉄道システムの海外展開に積極的に取り組み,国際的な標準とする取組を進める.

JR東海,2026年度の重点施策を決定

▲東海道新幹線の上級クラス座席(個室タイプ)のイメージ

 収益拡大策としては,東海道新幹線において個室タイプの上級クラス座席のサービスを開始するほか,2027(令和9)年度中の半個室タイプの導入準備を進める.
 上級クラス座席では,鉄道車両として世界初採用となるAGCの5G対応の透明ガラスアンテナを用いた専用Wi-Fi環境を整備するほか,公共交通機関として国内で初めてNTTグループの特許技術(PSZ)を用いたスピーカーを設置する.
 グループ事業では,2026(令和8)年秋の「コートヤード・バイ・マリオット京都駅」の開業や,共通ポイントサービス「TOKAI STATION POINT」のデータマーケティング強化により,グループ全体の成長を目指す.

JR東海,2026年度の重点施策を決定

▲水素動力ハイブリッドシステムの構成

 環境対策では,2050(令和32)年のCO2排出量実質ゼロを目指し,省エネ車両の投入や水素動力車両の開発を推進する.また,引退した新幹線のアルミを建材に再利用する「東海道新幹線再生アルミ」の活用範囲を拡大するなど,地球環境への負荷低減を図る.

一部画像はJR東海ニュースリリースから

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