株式会社東芝は,同社のリチウムイオン二次電池SCiB™セルを適用した,従来よりも高出力・高効率な鉄道車両向けハイパワーバッテリモジュールを新たに開発したと発表した.
本バッテリモジュールは,鉄道車両向けシステムとして東芝での従来品比で約3倍となる約300kWの高出力での充放電に対応している(同様のバッテリモジュール構成における従来の最大出力は約90kW).これにより,列車のブレーキ作動時に発生する回生エネルギーを従来品よりもさらに効率よく蓄電し,万が一電力供給が断たれた際に退避運転を行う電力を供給する非常用蓄電池として活用するほか,蓄電した電力を加速走行など列車運行のアシストにも活用できるため,鉄道運行で使用する電力量のさらなる削減や二酸化炭素排出量低減によるカーボンニュートラルの実現に貢献するとしている.なお,この技術については,2025(令和7)年11月26日(水)から29日(土)に幕張メッセで開催される「第9回鉄道技術展2025」の東芝ブースで紹介する予定.
列車のブレーキ作動時には,隣接する加速走行中の列車で利用可能な回生エネルギーが発生するが,近くにこのエネルギーを消費する列車が存在しなければ,車載の抵抗器または機械ブレーキにより熱として浪費されていた.昨今の電力料金の高騰などから,鉄道事業者には,使用電力量の削減など,さらなる省エネに向けた取組が求められており,この浪費される回生エネルギーを有効活用することが喫緊の課題となっている.東芝ではこの回生エネルギーを蓄電し,有効活用する鉄道車両向けシステムを直流600V架線区間では提供しているが,より効率的に有効活用するには,バッテリモジュールの架線電圧に対する適用範囲を広げ,高出力で充放電をする必要があった.一方で高電圧・高出力のバッテリモジュールの実現には,高電圧下での絶縁性能の強化や充放電時の発熱発生を抑制する必要があった.
新たに開発されたバッテリモジュールは,3つのコンセプト「高電圧下での絶縁性能の強化および装置の小形化」,「絶縁性能と放熱性能の両立」,「低損失ハイパワーセルの採用」で開発されている.
高電圧下での絶縁性能を強化したことで,国内の直流電化区間の9%%以上(路線長ベース/国土交通省 鉄道統計年報[令和4年度]4.施設・車両(14)電路設備表より)を占める直流1500V架線に対して,架線への直結が可能となる.また,回路構成を簡素化できるため,装置の小形化に寄与する.小形化にともより,車両へ容易に搭載することができ,かつ車両が軽量化することによる消費電力量の削減が期待されている.
一般的に,高電圧絶縁性能を強化すると冷却性能が低下するが,底板にアルミニウムを採用して新たに開発した独自の底面構造により,これまで難しかった高電圧絶縁性能と高出力での充放電にともなうセル発熱を効率的に取り除く高い熱伝導性を両立する.
内部抵抗が小さく,高出力での充放電でも損失と発熱が小さいハイパワー型のSCiBB™セル「20Ah-HPセル」を採用することで,SCiBB™の特長である長寿命・高い安全性,マイナス30℃の低温環境下での動作性も継承している.
画像は株式会社東芝提供












