
写真:JR東海N700S量産車 目黒義浩撮影 小田原—熱海間にて 2020-10-25
JR東海では,東海道新幹線における新たな営業車検測技術を開発したと発表した.
東海道新幹線では軌道(線路)や架線といった地上設備を健全な状態に維持するために,923形「ドクターイエロー」による計測や社員の徒歩巡回などにより検査を行なっているが,検測専用の車両を用いなければならず,検査にも労力がかかるという課題があり,さらなる安全性向上と効率化を目的として,これまでも営業車での検測を可能とする技術開発を進めてきた.

▲軌道検測システムの概要
軌道検測システムについて,「ドクターイエロー」では床下を通したレーザ光を基準線として,その基準線からレールまでの距離を計測し,軌道の形状を算出する方式となっており,レーザ光を通すためには車体の床面を底上げする必要があった.この方式では客室の天井高が低くなり,営業車に採用できないことから,レーザ光を通さずひとつの台車のみで検測可能なシステムを開発した(特許出願済).

▲架線検測装置の概要
架線検測装置について,「ドクターイエロー」では集電用とは別の測定専用パンタグラフに複数のセンサを搭載し,架線の異常有無を確認していたが,営業車の集電用パンタグラフ付近に新たに設置した3台のカメラで撮影した画像を解析することで,測定専用パンタグラフを必要とせずに架線の異常を自動で検知する装置を開発した.

▲先頭車画像装置の概要
先頭車画像装置については,営業車の運転台にカメラを新たに設置し,画像処理技術やAI技術を活用することで,電線類や電柱に対する支障物を高速走行中に自動で検知する国内初の装置を開発した(特許出願済).

▲営業車検測の全体像
今回の技術開発により,「ドクターイエロー」でのすべての検測を営業車検測で代替するとともに,社員が目視などで行なっている点検の一部も置き換えることができる.これにより,「ドクターイエロー」のような検測専用車両を開発・製造・運用する必要がなくなり,コストダウンにも繋がるとしている.
また,営業車での検測が可能となることで,「ドクターイエロー」での検測と比べ検査の頻度が向上し,東海道新幹線の安全性をさらに高めることができるとしている.
導入時期については,2027(令和9)年1月からの運用開始を見込んでいる.
一部画像は,JR東海ニュースリリースから