鉄道ファン2025年6月号(通巻770号)
『鉄道ファン』2025年6月号
2025年4月21日発売
定価1300円(税込)

東急,2025年度の設備投資計画を発表

東急電鉄 6020系

写真:東急電鉄6020系  編集部撮影  長津田検車区にて  2018-2-24(取材協力:東急電鉄)
※写真は急行列車用6020系

東急電鉄は,2025(令和7)年度に約482億円の設備投資を行なうと発表した.

東急,2025年度の設備投資計画を発表

▲目黒線3000系のエクステリアデザインイメージ

 安全・安心な鉄道の追求として,大井町線の各駅停車用9000系・9020系(18本計90両)を置き換えるため,5両編成の6020系を順次導入する.2025(令和7)年夏以降,計8本が営業運転を開始する予定.
 目黒線の3000系・東横線の5050系(8両編成)・田園都市線の5000系は,導入から約20年が経過しているため,エクステリア・インテリアデザインを一新するリニューアルを行なう.3000系は2025(令和7)年秋ごろ,5050系(8両編成)は同年冬ごろ,5000系は2026(令和8)年春ごろから順次,営業運転を開始する予定.

東急,2025年度の設備投資計画を発表

▲田園都市線 桜新町駅リニューアルイメージ

 田園都市線では,地下区間の5駅(池尻大橋・三軒茶屋・駒沢大学・桜新町・用賀)のリニューアルについて,引き続き工事を進める.
 第2弾となる桜新町駅のリニューアル工事は,2026(令和8)年夏ごろに竣工予定で,「WITH THE CHERRYBLOSSOMS」をコンセプトに,人々の暮らしや商店街の活気に寄り添う桜並木のような空間デザインとする.駒沢大学駅に続き,壁面タイルなどの既存材を活用した計画に加え,空調機を大幅に増強・新設し,駅構内の快適性向上を目指す.

東急,2025年度の設備投資計画を発表

▲田園都市線 田奈駅外観イメージパース

 築59年を迎えた田奈駅については,老朽化したホーム・コンコースの内外装改修を進めており,2026(令和8)年春ごろの竣工を予定している.田園都市線沿線の「まちをつくる魅力」と,田奈駅周辺地域の「大らかな自然の魅力」を,駅デザインや仕上げ素材にで表現する.
 宮崎台駅は,ホーム・コンコースの内外装と駅前広場のリニューアル工事を進めており,2028(令和10)年度の竣工を予定している.駅周辺の並木道の心地よさを駅から感じられるようにするほか,駅自体が「まちのリビング」のような存在となるために,「まちとのつながり」を意識し,「まちへ開いた駅」となることを目指す.
 このほか,踏切障害物検知装置の高度化,駅ホームへの非常停止ボタン増設,降雨・浸水対策,耐震補強工事を実施する.

東急,2025年度の設備投資計画を発表

▲「CBTCシステム」概要

 列車の安全・安定運行を確保するため,無線通信技術を活用して列車の位置や速度を連続的に把握し,列車間の安全な間隔を確保する「CBTCシステム」について,引き続き機器の設計や製作を進める.「CBTCシステム」は,2028(令和10)年度に田園都市線,2031(令和13)年度に大井町線に導入する予定で,2025(令和7)年度は引き続き設計や機器製作を進め,一部設備の工事に着手する.
 目黒線で導入している自動列車制御装置(ATC)については導入から24年が経過し,老朽化による機器故障リスクが高まっていることから,機器更新に着手し信号装置の健全性確保を図る.
 運営高度化と業界連携強化を目的に,駅オペレーションの効率化に向けた駅務機器のさらなる高度化を進める.2025(令和7)年度末には,遠隔対応が可能なセミセルフ型仕様の窓口処理機の導入を予定している.
 駅停車時に列車をホームドア開口部にあわせた定位置に停止させるための「定位置停止装置(TASC)」について,引き続き田園都市線での導入に向け,車両の改造工事や地上装置の設置を進める.これにより,運転士の運転操作の負荷を軽減させるとともに,効率的なブレーキ制御などによる遅延抑制や安定的な運行の確保を目指す.
 このほか,データ活用・分析による保守の高度化や「AI画像解析技術」を活用した運転業務のさらなる高度化,四足歩行ロボット「Spot(スポット)」を活用した点検・検査業務の高度化(実証実験)を進める.

東急,2025年度の設備投資計画を発表

▲クレジットカードのタッチ決済を活用した乗車サービス

 マーケティングによる沿線活力の創出として,クレジットカードのタッチ決済・QRコードを活用した乗車サービスを拡大する.2025(令和7)年度は,利便性のさらなる向上やシームレスな移動を実現するため,現在実証実験として導入している「クレジットカードのタッチ決済」・「QRコード」に対応した改札機の増備を進め,多様な乗車手段の利用動向に関する検証を進める.

※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です.

東急,2025年度の設備投資計画を発表

▲田園都市線・大井町線において導入予定の旅客案内装置のイメージ

 鉄道ネットワークの価値最大化を目的に,ホームと車両床面の段差・隙間の縮小工事を,引き続き各路線で実施する.旅客案内装置については,2026(令和8)年から田園都市線・大井町線で液晶ディスプレイを採用した新たな旅客案内装置を設置する.
 都市計画決定された,大井町線戸越公園駅付近の連続立体交差事業については,都市計画事業の認可や工事着手に向けた具体的な調査や設計を進める.この事業で,大井町線では計6ヵ所の踏切が解消される予定.
 このほか,5G通信網の整備や,新空港線の事業化に向けた取組を実施する.

東急,2025年度の設備投資計画を発表

▲「木になるリニューアル」 千鳥町駅 イメージパース

 鉄道による環境・社会課題の解決を目的に,大規模災害時のBCP強化や鉄道電力の効率的な活用,電力系統安定化を目指し,田園都市線に電力を供給する市が尾変電所に大規模蓄電システム(出力:2.1MW,容量:10MWh)を関東大手民鉄で初めて設置する.
 木材を活用した駅改良プロジェクト「木になるリニューアル」では,池上線 千鳥町駅での工事に着手しており,2026(令和8)年秋ごろの竣工を予定している.また,田奈駅リニューアル工事では,内装に木材を幅広のパネル状にして使用するとともに沿線の竹林から取れた竹材を活用する予定.桜新町駅リニューアル工事では,全国初となるすべての構造部材を木材とした地下駅から地上への出入り口を新設する予定となっている.使用木材の一部には「桜新町ねぶた祭り」などで地域にゆかりのある青森県材を活用する.

一部画像は東急電鉄ニュースリリースから

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