鉄道ファン2025年5月号(通巻769号)
『鉄道ファン』2025年5月号
2025年3月21日発売
定価1300円(税込)

東京メトロ,変電所電圧の適正化などを実施
〜回生エネルギーを有効活用へ〜

東京メトロ17000系

▲写真:東京地下鉄17000系  編集部撮影  新木場車両基地にて  2020-8-11(取材協力:東京地下鉄)

東京メトロは,電車がブレーキをかけたときに発生する回生電力を有効活用するため,2025(令和7)年度から変電所電圧の適正化の取組を全線に展開すると発表した.

東京メトロ,変電所電圧の適正化などを実施

 列車が走行に使用する電気の電圧である「き電電圧」を下げることで,「回生絞り込み」が発生しにくい状況を作ることができるが,一方で,電車線電圧が一定の電圧よりも降下すると列車の加速性能が低下し,運行ダイヤへの影響が懸念される.そのため,変電所・車両が保有するビックデータを分析・見える化し,最も回生効率が高い「き電電圧」を特定した.
 2023(令和5)年12月から,有楽町線の飯田橋—新木場間を対象に実証実験を開始し,当該区間の使用電力量が3%程度削減されたことから,2024(令和6)年4月以降,対象を丸ノ内線,東西線,半蔵門線,副都心線に拡大してきた.
 拡大した路線においても,一定の効果が得られたことから,2025(令和7)年度からは,対象路線を日比谷線,千代田線,南北線にさらに拡大し,全線で長期的な実証実験を開始する.この取組により,二酸化炭素換算で年間約4500トンの削減効果を見込んでいる.

東京メトロ,変電所電圧の適正化などを実施

 東京メトロでは,これまでに回生電力有効活用設備として,駅補助電源装置20台,電力貯蔵装置4台,電力回生インバーター3台を導入している.これらの装置は,これまでに得たデータを分析し,逐次フィードバックすることで最適な整定値に見直しをはかり,さらなる回生電力の有効活用につなげている.

東京メトロ,変電所電圧の適正化などを実施

 また,駅補助電源装置のさらなる回生電力有効活用の検討のため,2024(令和6)年4月から西船橋駅で実証試験を行なってきた.その結果,制御方式について電車線電圧を検知し制御する方式から,電車線電圧の波形を検知し制御する方式へ変更することで,活用できる回生電力が40%程度向上できる見通しがたったため,全駅補助電源装置の判定方式を変更する.この取組により,二酸化炭素換算で年間約370トンの削減効果を見込んでいる.

特記以外の画像は東京メトロ提供

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