JR東日本とパナソニック コネクトでは,誰もが聞き取りやすい放送装置「放送音量自動制御システム」を開発したと発表した.
これは,周囲の騒音をリアルタイムで集音し,利用客が常に聞き取りやすい放送となるように放送音量を自動で調整するもので,2020(令和2)年3月に高輪ゲートウェイ駅開業にあわせて,コンコースでの稼働試験を開始し,2023(令和5)年8月からのさいたま新都心駅コンコースでの稼働試験を経て,今回の本格稼働に至った.
駅においては,列車の走行音など周囲の騒音が大きく,また発着列車の有無などで騒音の変動があり,必要な情報を放送しても正しく内容が伝わりづらい状況があった.この課題に対して,JR東日本が培った駅の音環境に関する知見と,駅放送技術に長年の歴史を持つパナソニック コネクトの技術力を掛け合わせ,誰もが聞き取りやすい放送を実現するシステムを開発した.
システムは,常に変動するコンコース内の騒音を,騒音センサによりリアルタイムで集音し,騒音と放送音量の差を適切に常時維持するように放送音量を自動制御する(騒音量+7~10 dB程度).これにより,過剰にうるさく感じることなく,聞き取り易さの向上を図る.
放送音が過剰に大きくなる(うるささの閾値を超える)場合には,一定レベル以上に放送音量が大きくならないよう自動で音量を抑える「ピークカット機能」が搭載されている.
システムの特徴として,駅コンコースの騒音をリアルタイムで取得する際,騒音センサからは騒音のほかに音量制御された案内放送自体も拾うことになるが,自身の案内放送の影響を除外して騒音量を推測できる.また,特別なインターフェースを必要とせず,簡単な作業で既存放送設備に組み込むことができる.
既存放送設備と本システムの接続は,ボタンひとつでON・OFFの切替ができるため,状況に応じて,優先度の高い誘導案内などのアナウンスへ瞬時に切り替えができる.
なお,本システムは,2018(平成30)年3月にJR東日本とパナソニック コネクトで共同出願(特許出願2018-059129)し,駅の放送音量制御装置として2022(令和4)年に取得した特許(2022年10月4日特許証取得)をもとに構築している.
放送音量制御のようすは,パナソニック コネクトのページで聞くことができる.
画像はいずれもパナソニックグループ提供