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特集 新幹線最前線2025
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JR北海道,2023年度事業計画を発表

JR北海道 H100形量産車

写真:JR北海道H100形量産車  加藤 勝撮影  苗穂運転所にて  2019-12-13(取材協力:JR北海道)

JR北海道は,2023(令和5)年度の事業計画を発表した.

 輸送施設の安全性の向上については,車両故障対策として,H100形や737系の新製による老朽化した車両の置換えや,789系やキハ261系などの重要機器取替え工事を進める.線路設備については,橋枕木の合成枕木化や函館本線,室蘭本線のロングレール化などによる軌道強化を引き続き進める.電気設備については,室蘭本線の運行管理システムを更新する.また,青函トンネルき電用特高ケーブルや函館本線の電車線支持物と室蘭本線の変電所などの設備更新,踏切の保安度向上対策を進める.列車の運休により日中の作業時間を確保する「線路集中メンテナンス日」を設定し,集中的かつ効率的な修繕を実施する.
 鉄道施設の整備に関する計画では,軌道強化や高架橋の耐震補強,車両の新製など安全基盤の強化を進める.冬期の安定輸送の確保や,近年の記録的な大雪の影響による雪害を踏まえた対策として,排雪モータカーロータリーやポイントヒーターなどの導入する.駅・車両のバリアフリー化については,登別駅へのエレベータ新設工事や,キハ261系に車椅子スペースを増設する.新幹線では座席でのWEB会議や通話が可能な「TRAIN DESK」へのリニューアルを進める.このほか,札幌駅バスターミナル(北5西2)整備を進め,旅客サービスの向上を図る.
 鉄道オペレーションの変革として,業務のICT・AIなどによる省力化・省人化を進める.具体的には,交通系ICカード「Kitaca」エリアの拡大や,「北海道MaaS」の実現を視野にデータプラットフォームの開発を検討する.列車運行の省力化・省人化を進めるため,737系導入によりワンマン運転を拡大する.オペレーターがサポートを行なう「話せる券売機」の設置拡大や,線路閉鎖工事などの手続きのシステム化を検討する.さらにGNSS(全地球航法衛星システム)を活用した踏切制御システムなどの技術的検討や,さらなる安全確保のための運転支援アプリの開発を進める.

JR北海道 キハ261系5000番台「はまなす編成」

写真:JR北海道 キハ261系5000番台「はまなす編成」  編集部撮影  苗穂運転所にて  2020-8-31(取材協力:JR北海道)

 札幌圏輸送では,2023(令和5)年3月に開業した「北海道ボールパークFビレッジ」での試合開催日の輸送力確保と試合終了時刻にあわせて臨時列車を運行する.また,同施設と連携した利用促進企画の検討や,「北海道日本ハムファイターズ」とのタイアップ企画を引き続き実施する.「北海道ボールパークFビレッジ」に隣接する将来の新駅に関する関係者との協議を進める.
 都市間輸送については,利益の最大化を目指し,需要変動に合わせた在来線のイールドマネジメント強化の準備を進める.国や道の支援を受けたキハ261系5000番台「はまなす編成」・「ラベンダー編成」,H100形のラッピング車両を活用した周遊企画や,沿線自治体との連携した取組に加え,JR東日本や航空会社などとの連携による鉄道利用促進を図る.
 観光列車による観光需要の創出を図るため,“花たび そうや”号,“HOKKAIDO LOVE!ひとめぐり号”,“SL冬の湿原”号などを運行する.「THE ROYAL EXPRESS」については,新たなコースを設定し,JTBの実施する国内旅行キャンペーン「日本の旬」にあわせた団体臨時列車を運行する.サイクルトレインについては,今後の展開拡大に向け2022(令和4)年度に引き続き釧網本線において実証実験を実施し,他線区においても検討を進める.

JR北海道 H5系

写真:JR北海道H5系  編集部撮影  函館総合車両基地にて  2014-11-20(取材協力:JR北海道)

 北海道新幹線については,新幹線札幌駅の駅舎工事に着手し,引き続き南北乗換こ線橋工事,新幹線高架橋増設工事,耐震補強工事を進める.
 東京—札幌間4時間半の実現を目指し,新函館北斗—札幌間における最高時速320km化の工事について,JR北海道の負担により建設主体である鉄道・運輸機構が実施する.新設した「第一類新幹線電気車運転講習課程」による新幹線運転士養成を実施するほか,社員の教育・養成,札幌開業時の在来線の輸送体系や業務運営体制などの検討も引き続き行なう.北海道と沿線自治体が進める並行在来線の在り方に関する地元協議に積極的に協力する.
 新青森—新函館北斗間では,青函共用走行区間において,JR貨物などの関係機関と協議により,必要な保守間合いを引き続き確保する.収益を確保するため,JR東日本と共同での「ツガルカイセン」プロモーションの継続実施や,同社と連携した北海道新幹線のイールドマネジメントを実施する.新幹線の速達性を活かした荷物輸送(新函館北斗—新青森間)を引き続き実施する.

JR貨物EH800形

写真:JR貨物EH800形  株式会社東芝府中事業所にて  2012-11-27  編集部撮影(取材協力:JR貨物)

 経営自立に向けた取組では,北海道新幹線の札幌延伸の効果が発現する2031(令和13)年度の経営自立に向け,「JR北海道単独では維持困難な線区」,「青函トンネルの維持管理」,「貨物列車との共用走行」に関する課題に取り組む.
 「JR北海道単独では維持困難な線区」では,「鉄道よりもほかの手段が適しており,利便性・効率性の向上も期待できる線区」のうち,留萌本線(深川—石狩沼田間)は,2026(令和8)年3月末の鉄道事業廃止後の代替交通の確保について関係自治体と協議を進める.根室本線(富良野—新得間)は,関係自治体とともに新たな交通体系の検討・準備を進める.「利用が少なく鉄道を持続的に維持する仕組みの構築が必要な線区」については,監督命令にもとづき,第2期集中改革期間の最終年度となることから,引き続き地域の協力のもと,アクションプランを着実に進めるとともに,国の補助による調査・実証事業を活用し,その結果による「総括的な検証」や「事業の抜本的な改善方策」を検討する.また,地域交通を持続的に維持する仕組みなどの構築に向けて,主体的に関係者と検討・協議を進める.さらにオープンイノベーションの手法を活用し,募集した提案の事業化を進める.
 「青函トンネルの維持管理」については,トンネルとトンネル固有施設に係る修繕などの業務(付随事業)の役割・責任分担について,今後も関係者と協議を継続する.
 「貨物列車との共用走行」の問題解決に向けては,特定時期(ゴールデンウィーク,お盆,年末年始)における青函トンネル区間での時間帯区分方式による最高時速210kmの営業運転に継続して取り組み.特定時期の最高時速260kmの営業運転に向けたシステム改修工事を進める.また札幌開業後の共用走行区間の最高時速260kmの営業運転実施をめざし,実施可能な方策について関係者と検討・協議を進める.

写真はすべてイメージです.

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