JR貨物は,2023(令和5)年度の事業計画を発表した.
鉄道施設の整備に関する計画では,「安全の確立」,「安定輸送の確保」に資する脱線対策などのハード対策や鉄道施設の整備,更新を継続して実施する.車両部門では,故障による輸送障害を未然に防止するため老朽車両の取替を計画的に進める.九州地区については,交流回生ブレーキを装備したEF510形300番台の量産車を導入する.また,次世代コンテナ車の開発に向けて,必要な技術開発と検証を進める.
輸送設備の維持更新として,まくらぎの鉄まくらぎ化や,土木・電気設備の更新,電車線設備・連動装置の更新を実施する.経営体質の改善では,列車編成通知書の作成システムと運転支援システム(PRANETS)を活用した運転士への情報提供や,輸送系基幹システムの改良・更新により,駅のスマート化を図る.2022(令和4)年1月に試運用を開始したトラックドライバー用アプリ(T-DAP)については,順次全国の貨物駅への展開を開始するとともに,そのほかの機能の課題抽出とシステム改修を行なう.また,駅構内への新技術導入(DX化)の検討を進め,貨物駅のスマート化を進める.あわせて,多大な時間と労力を必要としている輸送や運用計画業務の効率性向上を図るため,輸送運用計画システムの開発を引き続き進める.
保安・防災・安定輸送対策として,レールゲートなど貨物駅の結節点機能強化・高度利用化を図る.また,仙台貨物ターミナル駅・沼津駅の移転工事と新技術を導入する.
災害発生時のBCP(事業継続計画)を強化するため,輸送障害発生時の列車運休情報について,WEBサイトの改善などに着手するとともに,グループ会社とも連携したトラック,定期航路(RORO/フェリー),一般貨物船の利用拡大に向けた具体的な仕組みづくりなど,代替輸送力の増強を進める.東海道本線寸断時の日本海縦貫線う回運転に必要となるEH500形の改造については,2022(令和4)年度までに18両を対象に完了した.さらに災害時の機関車運用の柔軟性を確保するため,仙台総合鉄道部配置のすべてのEH500形(48両)を対象に,引き続き同様の改造を施す.また,静岡総合鉄道部の名古屋貨物ターミナル駅乗入れの開始をはじめ,う回列車運転に備えた運転士の乗務線区拡大を継続実施する.
技術革新の加速化と労働人口の減少や外国人労働者の増加にともない,業務・サービスを抜本的に改革し事業の継続を図るため,新たな技術の研究開発や活用を引き続き積極的に行なう.
労働集約形の作業が多く存在する貨物駅の作業の見直しとして,「駅構内トラックの無人化・隊列走行」,「フォークリフトのガイダンス機能,セミオート機能」,「入換機関車の遠隔操縦」,「コンテナハンドリングマネジメントシステム(CHMS)」,「コンテナ積付検査画像診断」などについて,移転後の仙台貨物ターミナル駅や,スマート貨物ターミナルでの実用化と導入に向けた技術開発と,その前段の調査研究を進める.
省力化に向けた車両装置の要素開発として,「電気・空気管自動連結機構」などの開発を進める.あわせて,導入した新技術の円滑な利活用を支援するため,最新通信規格(5G)に関する調査研究を進める.また,鉄道物流におけるイノベーションを目指した新幹線による貨物鉄道輸送の実現に向けて,国や関係者と連携しながら,貨物新幹線車両などの検討を進める.
海外事業については,鉄道事業の新たな柱としての成長を目指し,特にタイとインドに重点を置いて活動する.タイでは,現在タイ国会において審議されている「Rail Trans−port Act(タイにおける民間企業の鉄道事業参入を認める新鉄道法)」について情報収集を行ない,貨物鉄道輸送事業の実施可能性及び貨物鉄道関連産業の参画可能性についての調査を進める.あわせて,タイを中心としたマレーシア・カンボジア王国・ラオス人民民主共和国など周辺国との国際鉄道輸送に関する事業化の可能性についても情報収集を行ない,LNGをはじめとする危険品の試験輸送実施の検討を進める.
インドでは,日系企業と共同で鉄道によるLNG輸送・供給事業の実施可能性についての調査・検討を進める.このほか,バングラデシュ人民共和国の鉄道連結性改善施設準備事業調査への参加や,コンゴ民主共和国へのディーゼル機関車整備能力強化を目的としたプロジェクト(JICA)への技術支援.マレーシア・ラオス人民民主共和国の鉄道事業者とICD(インランド・コンテナ・デポ)運営に対する技術支援についても検討する.
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