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西武多摩川線で「無線式列車制御(CBTC)システム」の実証試験を実施へ

西武多摩川線で「無線式列車制御(CBTC)システム」の実証試験を実施へ

西武鉄道は,多摩川線において2023(令和5)年1月から無線式列車制御(CBTC)システムの実証試験に向けた準備工事に着手し,2024(令和6)年度初頭に走行試験を開始する予定であると発表した.

【画像2】 西武多摩川線で「無線式列車制御(CBTC)システム」の実証試験を実施へ

 今回の試験では既存設備を活用して効率的に無線式列車制御システムを実現する「西武式CBTCシステム」の実証を進める.
 「CBTC(Communications-Based Train Control:無線式列車制御システム)」とは,無線技術を活用し,各列車の正確な位置を地上設備に常時送信することにより,列車間の安全な距離を確保する「移動閉そく式」の信号保安装置である.
 従来の信号保安装置は,線路を一定区間(閉そく区間)に区切り,各閉そく区間に設置された信号機などの地上設備により,すでに列車が在線している閉そく区間に次の列車が入るのを防ぐことで列車間の安全を確保する「固定閉そく式」にもとづいたもので,「移動閉そく式」の導入により,安全かつ効率的な列車の運行を実現することができる.

西武多摩川線で「無線式列車制御(CBTC)システム」の実証試験を実施へ

 現在はヒューマンエラーが発生した場合,列車の安全を確保するため,自動で非常ブレーキがかかるATS(Automatic Train Stop)が導入されている.「CBTCシステム」では,無線通信で列車の位置を把握し,その列車の走行する区間の制限速度や前方列車との距離に従って信号システムが自動で速度を制御するため,ヒューマンエラーを事前に回避することで,安全性が向上する.
 従来の信号システムで使用されていた信号機や軌道回路などの重厚な地上装置の大半が削減可能となる.これにより,メンテナンス費用の削減に加え,信号システムの保守,運用効率を高めることができるほか,システムの一部に障害が発生しても機能が維持できるようシステムが二重化されているため,信号装置の故障に起因する輸送障害の発生リスクも低減する.

西武多摩川線で「無線式列車制御(CBTC)システム」の実証試験を実施へ

 さらに,無線通信により列車の位置と速度を常時把握するため,高度な自動運転の導入や高度な踏切制御による「開かずの踏切」対策など,さまざまな技術革新の基盤システムとなる.
 西武鉄道では1967(昭和42)年から,駅付近の踏切の制御開始地点を変更し,鳴動時間を適正化する「賢い踏切」を導入している.これは,「急緩行列車選別装置」により列車の駅通過や停車の識別を行なっているが,「CBTCシステム」では,列車位置と速度を常時把握することで,列車ごとに踏切の鳴動開始のタイミングを調整することができるため,これまで以上に踏切の遮断時間を最適化することが可能となる.
 今後は,実証試験の検証結果と,鉄道各社の動向を踏まえ,次世代信号システムの方式を決定し,2030年代に全線での導入を目指す.

※画像はすべて西武鉄道提供

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