東京都交通局では,公益財団法人 鉄道総合技術研究所(鉄道総研)と連携し,導電鋼レール方式の剛体電車線において,デジタル技術を活用した計測手法の実用化に成功したと発表した.
トンネル断面が小さい大江戸線では,省スペースで設置でき,かつ長寿命な電車線として導電鋼レール方式の剛体電車線が採用されている.この電車線は,一般的な電車線と比較して摩耗しにくいが,全線開業から20年以上が経過した大江戸線では,徐々に摩耗が進行しており,電車線の状態をより精緻に把握する方法が必要とされていた.
電車線の検査では,設置高さや摩耗量などを計測し,定められた基準値内であることを確認する必要があり,浅草線や三田線で使用している一般的な電車線では,機械化された計測手法が確立されているが,大江戸線の電車線では,摩耗が進行しても底部の幅が変わらないため,同様の手法では摩耗量が計測できない.そこで,鉄道に関する高度な専門技術を保有する鉄道総研と協力し,鉄道総研と日本電設工業が開発した新技術を用いた計測装置を使用して,剛体電車線の計測への活用可能性を検証してきた.
新たな計測手法では,帯状のレーザーを剛体電車線に照射し,その反射光をカメラで撮影する光切断法により,断面形状から摩耗量を解析する(図2).
東京都交通局では,試験用の計測装置を保守用車に搭載して走行しながら大江戸線の電車線を計測し,電車線の検査に必要な計測を,高さなども含めて問題なく実施できることを確認した(図3).また,これまでは定点での確認となっていた電車線の状態を連続的に把握することも可能となり,大江戸線全線(営業キロ:40.7km)を4回の夜間作業で計測できることを確認した.
今後は,2024(令和6)年度の導入に向け,さらに検討を進める.
一部画像は東京都交通局提供