日立製作所のグループ会社である日立レール社は,ワシントン首都圏北部にあるメリーランド州ワシントン郡に鉄道車両製造工場を建設すると発表した.新工場では,米国Washington Metropolitan Area Transit Authority(ワシントン首都圏交通局)向けの8000系を製造する.投資額は,7千万ドル(約83億円)となる.
日立は,米国における鉄道事業を拡大させており,新工場はワシントン首都圏向けの最新車両を製造するほか,北米の鉄道市場の要望に幅広く対応する.この投資は,新工場を米国の鉄道事業の中心と位置づけられ,戦略的に決定した.また,新工場は熟練工を育成し,地元の幅広いサプライチェーンを創出し,地元に大きな経済効果をもたらすとしている.
工場建設予定地であるメリーランド州ワシントン郡は,ワシントン首都圏に隣接し,車両が納入されるワシントン首都圏交通局のグリーンベルト車両基地へ車で90分で移動搬送することができる.また,メリーランド州を含むヘイガーズタウン大都市圏は「ハブシティ」として知られ,米国北東部の物流の中心地である.開発中のメリーランド州ワシントン郡のホープウェルバレー工業団地近くの土地を取得し,整地作業を開始する.建設工事は,2022(令和4)年秋から本格的に開始し,2023(令和5)年度の冬の開業を目指す.
工場建屋の広さは,アメリカンフットボール場約5個分の30万7000平方フィート(約28500m²)で,大規模な製造ラインや倉庫,事務所が設置される.工場敷地は41エーカー(約16万6000m²)となる.また,敷地内の800ヤード(約730m)の試験線で,走行試験を行なう.また,1ヵ月に最大20両の地下鉄車両が製造できるほか,トラムや地下鉄,高速列車まで,あらゆる種類の車両の製造にも対応する.
新工場には,フロリダ州マイアミ,日本,イタリア,英国の車両工場で培った製造技術を取り入れる.また,日立グループのデジタル技術を活用し,製造,試験,部品管理の最適化を図る.これらの取組と,従業員への質の高いトレーニングにより,最高水準の信頼性と性能を誇る地下鉄車両を製造する.
新工場は,460名の従業員を含む,1300名が従事する計画で,これらの雇用により,年間3億5000万ドル(約415億円)の所得がもたらされるため,ワシントンDC,メリーランド州,バージニア州に大きな経済効果を生み出すことが期待されている.また,工場建設の60%に当たる4000万ドル(約46億円)以上がこれらの地域に発注され,1/4以上(約27%)が中小企業に発注される予定.
新工場の最初の作業は,2021(令和3)年3月に発表された,ワシントン首都圏交通局向け地下鉄車両8000系の製造となる(最大22億ドル/約2530億円).
8000系は2両1組で,1組当たり130席の電動車であり,1980年代前半から運行されている2000系と3000系の代替として導入する.基本契約は256両(オプション含め最大800両)となる(鉄道ニュース2021年3月21日掲載記事参照).
日立は気候変動対策に取り組んでおり,従来車両より静かでエネルギー効率に優れている8000系の導入により,交通渋滞,大気汚染や二酸化炭素排出を低減し,ワシントン首都圏の環境目標達成に寄与するとしている.
画像はすべて日立製作所提供