近畿日本鉄道と近鉄レジャーサービスは,生駒ケーブル(生駒鋼索線)と生駒山上遊園地の大形遊具「飛行塔」が,私鉄の観光施策をあかす最古の施設として,公益社団法人土木学会から「土木学会選奨土木遺産」に認定されたと発表した.
「土木学会選奨土木遺産」は,公益社団法人土木学会が,土木遺産の顕彰を通じて歴史的土木建造物の保存に資することを目的として,2000(平成12)年に認定制度を設立したもので,推薦または一般公募により,年間20件程度が選出されている.
生駒ケーブルは宝山寺参拝の利便性向上のため,宝山寺線(鳥居前—宝山寺間)が日本最初のケーブルカーとして1918(大正7)年に開業した.その後,1929(昭和4)年の生駒山上遊園地の開業にあわせて,山上線(宝山寺—生駒山上間)が開業した.戦時中には生駒山上に海軍基地が設置され,営業を休止した時期もあるが,駅設備や車両などの更新・改良を重ねながら営業を続けてきた.現在も,宝山寺への参拝者や生駒山上遊園地への来園者に加え,通勤・通学といった生活路線として沿線住民にも利用されている.
生駒山上遊園地の飛行塔は,1929(昭和4)年の開園当初から稼働しており,現存する日本最古の大形遊具といわれている.日本で数々の大形遊具を手がけた土井万蔵氏の代表作ともいわれ,同氏の作品で現存するものは,生駒山上遊園地の飛行塔のみとなっている.戦時中の物資不足で日本中のあらゆる金属が回収されていくなか,飛行塔は軍の防空監視所として使用されたため,奇跡的に存続した.構造体は開園当初のままで,ゴンドラに乗って回る空中散歩は,山頂でしか味わえない景色として人々を魅了し,その雄姿は今なお世代を超えて愛されている.
画像上:宝山寺線車両「すずらん・白樺・ミケ・ブル」
画像下:生駒山上遊園地の飛行塔
画像はいずれも近畿日本鉄道提供