JR東日本は,品川開発プロジェクトの第I期エリア内で出土した高輪築堤について,今後の調査・保存方針を決定したと発表した.
「高輪築堤」は,明治初期に鉄道を敷設するため海上に構築された構造物で,2019(令和元)年4月に品川駅改良工事において石積みの一部が発見された.その後,同年11月に実施された山手線と京浜東北線の線路切換工事以降に,レールなどの撤去を行なったところ,2020(令和2)年7月に高輪築堤の一部とみられる構造物が発見された.築堤の調査・保存方針に関する取りまとめについては,同年9月から考古学・鉄道史などの有識者で構成された高輪築堤調査・保存等検討委員会を計7回開催し,議論・検討してきた.
上記の委員会での取りまとめを踏まえ,(1)現地保存・公開,(2)移築保存,(3)記録保存調査の3点の方針がまとめられた.(1)については,橋りょう部を含む約80m(3街区)の現地保存を行ない,建設当時の風景を感じられるように公開する.また公園隣接部の約40m(2街区)については,築堤を身近に感じられるように,文化の発信拠点である文化創造施設と一体的に公開する.
(2)については,信号機土台部を含む約30m(4街区)を移築保存する.移築先は,高輪ゲートウェイ駅前の国道15号沿いの広場を基本に,検討と関係者との調整を進める.移築保存にあたっては,ていねいに記録保存調査を行なうとしている.
(3)については,上記の図の調査範囲において,港区教育委員会と連携し,考古学・鉄道史・土木史などの諸分野の知見にもとづいた調査を進める.この調査では,築堤から取り外した石や杭を計測・記録するほか,築堤内部の土層の状況も調査・記録する.なお,橋りょう部・公園隣接部のほか,築堤を土の中に埋めたまま現地保存できる範囲(道路下など)は調査対象外とする.
このほか,橋りょう部(3街区)などの現地保存・公開を進めるため,3街区建物などの計画変更を行なう.計画変更に必要となる都市計画などの変更手続きは,国・東京都・港区などの関係行政と連携して進める.
まちづくりの中で築堤を保存・公開するにあたり,今後は,最新技術を活用して当時の築堤の景観を体験できる展示や,まちづくりの中で連続的に築堤位置を感じられる工夫をすることで,築堤の価値を次世代に継承し,地域の歴史価値向上と地域社会への貢献を目指す.また,周辺地域を含めた歴史・地域文化を学べるプログラムの実施を検討する.
写真・画像はいずれもJR東日本のニュースリリースから