JR北海道は,2021(令和3)年度事業計画を発表した.
輸送施設の安全性の向上については,車両故障対策として,H100形の新製によるキハ40形の置換えやキハ261系の新製投入,789系やキハ201系などの重要機器取替え工事を進める.軌道設備については,引き続き,橋枕木の合成枕木化やロングレール化などによる軌道強化を進める.電力・信号・通信設備については,函館本線・室蘭本線の運行管理システム更新や,踏切の保安度向上を進める.列車の運休により日中の作業時間を確保する「線路集中メンテナンス日」を石北本線白滝—遠軽間や釧網本線浜小清水—網走間に設定し,集中的かつ効率的な修繕を実施する.
また,冬期間の安全輸送の確保として,引き続き除雪機械と列車の衝突や除雪作業員の触車事故などの事故防止,気象情報の早期把握と確実な予防除雪に取り組む.さらに,排雪モータカーロータリーなどの除雪機械の更新や,ラッセル車の更新計画を策定する.
鉄道運輸収入の回復に向け,引き続き快速“エアポート”の利便性向上をPRする.都市間輸送については,北海道新幹線開業5周年や「東北デスティネーションキャンペーン」効果の道内各地への波及,北海道・国などによる各キャンペーンにあわせた営業施策の検討・展開,「お先にトクだ値」の設定,航空会社との連携などにより利用促進を行なう.
また,新製したキハ261系5000番台(はまなす編成・ラベンダー編成)を活用した都市間輸送の販売強化と周遊企画や,北海道各地の観光素材を組み込んだ旅行商品造成への働きかけ,沿線自治体と連携した観光素材の発掘・提案をする.このほか,JR東日本・びゅうトラベルサービスと連携した北海道内や北海道発の鉄道利用旅行商品を設定し,旅行需要を喚起する.
東京オリンピック関連では,一部競技の札幌開催に向けて,観客輸送計画の策定や警備体制の整備を進め,円滑な鉄道輸送サービスを提供する.
業務の効率化と経費削減策として,遠隔地でもオペレータと話しながらきっぷを買うことができる「話せる券売機」の設置駅の拡大,分岐器検査装置の導入を進める.また,利用の少ない駅の見直し,副本線や不要ホームなどの使用頻度の低い設備の使用停止・廃止を引き続き進める.
観光列車については,キハ40形「山紫水明」シリーズを用いた“花たび そうや”号の運転や,東急との共同事業である「THE ROYAL EXPRESS」の運転,“SL冬の湿原号”の客車リニューアルの実施など,地域と連携した新たな観光需要を創出する.
札幌圏輸送の基盤強化については,札沼線あいの里公園—石狩太美間に設置する新駅工事を進める.また,「北海道ボールパークFビレッジ」の開業に向け,北広島駅の改修とアクセス輸送の検討を進めるとともに,請願駅の新設に向けた関係者との協議や新千歳空港アクセス強化の課題解決を行なう.
北海道新幹線については,安全・安定輸送の確保に向けて,青函共用走行区間の輸送安全確保と効率的なメンテナンスを実施するため,JR貨物など関係機関と協議を実施し,引き続き必要な保守間合いを確保する.
札幌開業に向けては,札幌駅11番線ホーム新設工事や同駅の新幹線高架橋・幹在乗換こ線橋の詳細設計,函館本線倶知安駅・長万部駅の支障移転工事などを進める.あわせて,新幹線乗務員の自社養成に向けた準備や,札幌開業時の在来線輸送体系・業務運営体制などの検討,貨物列車との共用走行に起因する課題の抜本的な解決に向けた具体的な検討を進める.
青函トンネル区間の速度向上については,2020(令和2)年度の年末年始に実施した「時間帯区分方式」による最高時速210kmの営業運転に継続して取り組み,最高時速260kmの営業運転に向けた検討を進める.
持続可能な交通体系の構築では,2021(令和3)年4月1日(木)にバス転換を実施した日高本線鵡川—様似間に続き,留萌本線深川—留萌間,根室本線富良野—新得間について,引き続き地域住民の理解が得られるよう取組を進め,地域の足となる新たなサービスへの転換の合意を目指す.
このほかの「利用が少なく鉄道を持続的に維持する仕組の構築が必要な線区」については,監督命令にもとづき,第2期のアクションプランの推進と検証を実施し,利用促進やコスト削減による線区収支改善に取り組みながら,第2期集中改革期間終了時の「総括的な検証」に備える.また,線区を持続的に維持する仕組などの構築について,関係者と検討・協議を進める.さらに国・北海道から支援を受け,北海道高速鉄道開発(株)が取得し,JR北海道に無償貸与される観光列車などの車両を有効に活用する.