東京地下鉄(東京メトロ)は,2020(令和2)年度の事業計画を発表した.
2020(令和2)年度の設備投資額の合計は1690億円で,「安心の提供」として,自然災害対策の推進,駅ホームの安全性向上,新形車両の導入,セキュリティの強化,輸送サービスの改善,バリアフリー設備の整備や利用者の視点に立ったサービスの充実などの取組を進める.
駅ホームの安全性向上のために進めているホームドア整備について,年度内に銀座線全駅への整備を完了する.また,日比谷線,東西線,半蔵門線への設置工事を進める.
新形車両については,有楽町線・副都心線に17000系4編成を導入する.引き続き丸ノ内線2000系と日比谷線13000系を導入するとともに,半蔵門線18000系の設計などを進める.なお,日比谷線13000系については年度内に全44編成の導入が完了する.また,安全性向上のため,脱線検知装置の搭載,車両情報管理装置の次世代化など,新技術を導入する.車内の快適性向上を図るため,座席幅の拡大や車内フリースペースの増設,車内空調設備の高性能化など行なう.加えて,環境負荷低減のため,永久磁石同期モータの採用などによる省エネルギー化を進める.
輸送サービスの改善として,東西線では,混雑緩和や乗降時間短縮による遅延防止を図るため,茅場町駅のホーム延伸,木場駅のホーム・コンコース拡幅,南砂町駅の線路・ホーム増設などを実施する.また,将来的な列車増発に向けて飯田橋駅—九段下駅間に折返し設備を設置する.銀座線では,遅延吸収能力の改善など,輸送の安定性向上を図るため,浅草駅構内に折返し線を設置する.丸ノ内線,日比谷線や半蔵門線では,高い遅延回復効果を得ることができるCBTC(無線式列車制御)システムの導入に向けた取組を行なう.
日比谷線では,虎ノ門ヒルズ駅開業にあわせてダイヤ改正を実施し,朝・夕時間帯の霞ケ関駅—中目黒駅間列車を増発する.あわせて東武線・日比谷線相互直通列車では,有料座席指定制列車「THライナー」の運転を開始する.有楽町線豊洲駅において,混雑緩和を図るため,改札機増設などの工事を完了する.また,有楽町線・南北線飯田橋駅では,混雑緩和を図るため,改札内広間の拡幅,改札機の増設などの工事を完了する.
南北線では,車両の8両編成化とそれにともなう駅設備の改修を実施する.このほか,ハード面の対策に加え,ソフト面からもラッシュの分散化を図るため,混雑状況を乗客に情報提供する取組を実施する.あわせて,東西線や混雑駅においてメトロポイントクラブを活用したオフピークプロジェクトを実施する.また,スムーズビズの一環として展開している「時差Biz」にあわせ,快適通勤を推進する各種取組を実施する.
バリアフリー設備関連では,エレベータの設置を進める.これにより1ルート整備率100%実現に向けて取り組むことに加え,病院の最寄り駅や「東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会」会場の最寄り駅などに複数ルートを整備するほか,乗換ルートの整備を進める.また,車いす利用者などが円滑に乗降ができるよう,銀座線・丸ノ内線・千代田線の各駅などで,ホームと車両床面との段差の低減・隙間の縮小を進める.
利便性・快適性の向上としては,銀座線全駅改装などの大規模なリニューアルに向け,商業エリア(日本橋駅・京橋駅),銀座エリア(銀座駅),トレンドエリア(青山一丁目駅・外苑前駅)の改装工事を完了する.駅構内案内サインについては,大規模改良工事を実施している一部駅などを除き,全線においてリニューアルを完了する.
また,全編成・全車両に車両内Wi-Fi整備を完了するほか,有楽町線池袋駅に旅客案内所を増設する.日比谷線の虎ノ門ヒルズ駅開業にあわせて,「虎ノ門駅—虎ノ門ヒルズ駅」と「銀座駅—銀座一丁目駅」を新たに乗換駅として設定し,ネットワークの利便性向上を図る.さらに,利用に不慣れな方や身体障がい者の方にも安心して利用できるよう,改札外乗換時間を30分から60分に延長する.
利用者のニーズをとらえた取組では,旅行者の利用機会創出として,海外の現地旅行博への出展を行なうほか,SNSなどでのプロモーションを強化する.また,他事業者との連携も視野に入れ,新たな企画乗車券を発売する.ポイントを活用したお出かけ需要の創出として,メトロポイントクラブに登録したPASMOで東京メトロを利用し,東京メトロ沿線のイベントなどに参加することで,ポイントを獲得できるサービスを実施する.
東京都交通局との連携では,東京の地下鉄のサービス一体化の一環として,子ども見守りサービス「まもレール」を開始する.