公益財団法人鉄道総合技術研究所(以下:鉄道総研)は,搭載機器の小形化・高性能化を行ない,起動加速度を高めた燃料電池ハイブリッド試験電車が完成したと発表した.
これまで鉄道総研では,化石燃料をエネルギー源とするディーゼル車両を置き換えることで,温室効果ガスの排出量を削減できる燃料電池鉄道車両の開発を進めてきた.2008(平成20)年からは,燃料電池とバッテリのハイブリッド構成とした試験電車を用いて所内試験線での走行試験などを実施し,鉄道車両としての基本性能を確認していたが,この時点では搭載機器が大きく一部は室内に設置されており,また加速性能もディーゼル車並みにとどまっていた.
新たな試験電車は,搭載機器の小形化・高性能化を行ない,燃料電池の高出力密度化や冷却装置の分散配置などにより,出力を50%増すとともに,出力当たり体積を20%減少させている.また,燃料電池用電力変換装置は,SiC(炭化ケイ素)素子や小形遮断器を採用し,体積を45%減らしたことで,鉄道事業者による将来の燃料電池電車導入に資するものとした.
今後は,鉄道総研内試験線の走行試験で,エネルギー効率向上を目指したハイブリッドシステムの制御方法の改良や,燃料電池への負担が小さい制御方法などの研究開発を行なう予定.
なお,完成した試験電車はまだ走行できないが,2019(令和元)年8月29日(木)・30日(金)に開催されている『鉄道総研技術フォーラム2019』で展示が行なわれている.
写真はすべて鉄道総合技術研究所ニュースリリースから