JR東海では,2021(令和3)年4月から,N700S営業車による地上設備計測を実施すると発表した.
東海道新幹線では,計測専用の車両である923形(ドクターイエロー)により,定期的に軌道や電気設備の計測を実施し,計画的に保守作業を行なうことで日々の安全・安定輸送を確保している.あわせて,より高頻度に設備の状態把握を行ない,タイムリーに保守作業ができるよう,営業車にも搭載可能な計測機器の小形・軽量化などの技術開発に取り組んできた.
すでに,走行中の営業列車で軌道の状態を計測する「軌道状態監視システム」については導入しており,乗り心地の向上を図っているが,2018(平成30)年6月からは,新たな計測項目を追加させた「軌道状態監視システム」をN700S確認試験車に搭載して走行試験を実施している.
さらに今回,電気関係の設備の状態を走行中の営業列車で計測する「トロリ線状態監視システム」と「ATC信号・軌道回路状態監視システム」という2つのシステムについても技術開発を行ない,2018(平成30)年10月から順次,N700S確認試験車に搭載して走行試験を実施している.今回,これら3つのシステム(状態監視システム)について,実用化の目途が立ったことから,N700S営業車での計測を行なうこととなった.
トロリ線状態監視システムは,走行中に,トロリ線の状態(摩耗,高さなど)を計測するシステムで,照射光源に赤外線LEDを採用することで,太陽光によるノイズを受けにくく,安定した計測が可能になったほか,トロリ線状態監視装置内にカメラとトロリ線の高さを検出する機器を新設し,トロリ線の高さに応じてカメラのピントを調整して,高速走行時でも正確な計測を可能にした.これにより,おもに夜間の作業員による定例的なトロリ線計測を省略する.
ATC信号・軌道回路状態監視システムは,走行中に,レールに流れるATC信号,帰線電流(電車からレールを伝って変電所に帰っていく電流)を計測し,取得したデータを定期的に保守部門の現業機関などへ送信するシステムである.新たなシステムでは,異常の予兆を早期に検知し,信号設備・軌道回路に対して必要な処置や保守を速やかに行なうことが可能となった.
計測機器は,N700S営業車の3編成に状態監視システムを搭載する.また軌道状態については,より高頻度に計測を行なうため,さらに別の3編成にも「軌道状態監視システム」を搭載する.
今後は,2021(令和3)年3月までにN700S確認試験車に搭載した計測機器の長期耐久性などを確認し,同年4月から計測機器を搭載したN700Sの営業運転を開始する予定.
特記以外の写真はJR東海のニュースリリースから