東京地下鉄(東京メトロ)は,2019年度の事業計画を発表した.
2019年度の設備投資額の合計は1850億円で,新たな中期経営計画「東京メトロプラン2021」(2019年度〜2021年度)の初年度として,「安心の提供」として自然災害対策の推進,駅ホームの安全性向上,新形車両の導入,セキュリティの強化,輸送サービスの改善,バリアフリー設備の整備や利用客視点に立ったサービスの充実などの取組を推進する.
駅ホームの安全性向上のために進めているホームドア整備について,年度内に千代田線全駅への整備完了し,日比谷線,東西線,半蔵門線では設置工事が進められる.
新形車両については,丸ノ内線2000系,日比谷線13000系の導入を積極的に進めるとともに,有楽町線・副都心線用の17000系,半蔵門線用の18000系についても,導入に向けた設計などを実施する.安全性向上のため,操舵台車の導入や,脱線検知装置の搭載,車両情報管理装置の次世代化など,新技術の導入をすすめる.車内の快適性向上としては,座席幅の拡大や,車内フリースペースの増設,車内空調設備の高性能化を実施する.
輸送サービスの改善として,東西線において,混雑緩和および乗降時間短縮による遅延防止を図るため,茅場町におけるホーム延伸,木場におけるホーム・コンコース拡幅,南砂町における線路・ホーム増設などを実施する.また,将来的な列車増発に向けて飯田橋—九段下間に折返し設備整備を整備する.銀座線では,遅延吸収能力の改善など,輸送の安定性の向上を図るため,浅草駅構内の折返し線を整備する.
丸ノ内線では,方南町駅のホーム延伸工事を完了させ,2019年度上期に池袋—方南町間の6両編成列車直通運行を開始する.丸ノ内線,日比谷線・半蔵門線では,高い遅延回復効果を得ることができる「CBTC(無線式列車制御)システム」の導入を推進する.有楽町線では,豊洲の改札機増設や,夕・夜間時間帯の列車を増発するとともに,日中時間帯の5分間隔運転を実施する.有楽町線・南北線の飯田橋では,混雑緩和を目的に,改札内広間の拡幅や,改札機増設などの工事を実施する.南北線では早朝・朝ラッシュ時間帯の列車増発や8両編成化にともなう駅設備などの改修を実施する.またハード面の対策に加え,ソフト面からもラッシュの分散化を図るため,混雑状況の情報提供や,東西線をはじめ混雑駅においてメトロポイントクラブを活用したオフピークキャンペーンを実施する.
バリアフリー設備関連では,エレベータの設置を進め,病院の最寄り駅や「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」会場の最寄り駅などへのルート整備や,乗換ルートの整備を推進する.また,全駅への多機能トイレの整備完了やホームと車両床面の段差・隙間縮小に向けた各種施策を実施する.
利便性・快適性の向上としては,銀座線全駅改装などの大規模なリニューアルに向け,商業エリア(日本橋,京橋),銀座エリア(銀座),トレンドエリア(青山一丁目,外苑前)の改装工事を進める.渋谷については,渋谷駅街区基盤整備の一環として,同駅の移設・改良工事を引き続き取り組み,新ホームの供用を開始する.このほか,トイレ全個室の洋式化などを完了する.
利用客のニーズをとらえた取組では,オンライン決済した「Tokyo Subway Ticket」を,QRコードにより旅行者向け券売機で発券するスキームを構築し,販路の拡大と訪日外国人・国内旅行者の利便性向上を図る.加えて,他事業者との連携も視野に入れ,新たな企画乗車券を発売する.さらにポイントを活用した新たなお出かけ需要の創出として,メトロポイントクラブに登録したPASMOで東京メトロを利用し,東京メトロ沿線のイベントなどに参加することで,ポイントを獲得できるサービスを開始する.
東京都交通局と連携では,両社局共同で開発した旅行者向け券売機の導入や,九段下の乗換え改善に向けた改良工事を完了する.また,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向け,関係機関とも連携し,大会期間中の円滑な旅客鉄道輸送サービスの提供に向けた準備を推進する.さらに日比谷線,千代田線,有楽町線・副都心線の駅構内案内サインについては,順次リニューアルを実施する.