近畿日本鉄道は,フリーゲージトレインの実用化に向けて開発を進めると発表した.
フリーゲージトレインの導入が検討されるのは,京都—吉野間.吉野線は,世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」にある吉野山や,飛鳥などの観光地を抱え,近鉄では吉野エリアを重要な観光の拠点であるととらえ,南大阪線 大阪阿部野橋駅から吉野駅までを結ぶ観光特急「青の交響曲(シンフォニー)」をはじめ,特急列車などの運転を行なっている.いっぽう,新幹線との接続駅である京都駅から吉野線に向かうためには,途中,橿原神宮前駅での乗換えが必要となっている.橿原神宮前駅での京都線・橿原線(標準軌1435mm)から吉野線(狭軌1067mm)への直通運転は,以前から,軌間の統一,三線軌条などさまざまな解決方法が模索されてきた.フリーゲージトレインが実用化すれば,京都駅から京都線・橿原線を経由し,橿原神宮前駅からレール幅の異なる吉野線を経て,吉野駅まで直通運転することが可能になる.また,近鉄特急ネットワークの全路線において直通運転が可能となり,首都圏とつながる新幹線と,大阪・京都・奈良・名古屋・伊勢志摩・吉野などの各観光拠点が直通運転でつながることで,乗客の利便性向上,近鉄のネットワークの価値向上が期待できる.
今後,6月22日付の役員異動にあわせて,近鉄の総合研究所にフリーゲージトレイン開発推進担当役員を就任させる.同社では,「今後,国土交通省とも相談させていただきながら,ほかの鉄道事業者や鉄道車両メーカーなどとともに,フリーゲージトレインの実用化に向けた検討を進めていきたい」としている.
写真:近畿日本鉄道16200系「青の交響曲(シンフォニー)」 編集部撮影 天美車庫にて 2016-8-3(取材協力:近畿日本鉄道)