近畿日本鉄道は,同社が事業主体となり京三製作所およびモハラテクニカと共同開発した「鹿の線路内への侵入防止システム(通称:シカ踏切)」が,2017年度「グッドデザイン賞」を受賞したと発表した.
鹿が線路をはさんで存在する生息域を行き来するために線路内に侵入することから,「シカ踏切」は,線路周辺に侵入防止ネットを張り鹿が線路内に侵入するのを防ぎつつ,獣道に通じる一部区間は鹿が通れるようにしており,その場所に鹿が嫌う超音波を発信する装置を設置,列車運行がある時間帯は超音波を発信して,その間の鹿の線路侵入を抑止する.逆に列車運行がない時間帯は超音波の発信を止めることで,鹿は自由に線路へ侵入し,安全に横断することができる仕組み.
近鉄では2016(平成28)年5月から,大阪線東青山付近の約1km(三重県津市)と榛原—室生口大野間の約1km(奈良県宇陀市)にこの仕組を導入し,当該区間では,鹿との接触事故はほぼなくなり,大きな効果が出ている.
選考委員会では,「シカ踏切」が,鉄道と野生動物の関係について,野生動物の視点で考えることの大切さを教えてくれるシステムであり,優しい発想で鹿のための踏切システムを提案している点,また,多くの犠牲となった鹿の存在により,鹿について知ることができ,鹿の目線で問題を捉えることができたという,デザインにおける視点の重要性を示唆してくれる好例である点を評価し,今回の受賞となった.
近鉄の「シカ踏切」が,2017年度「グッドデザイン賞」を受賞
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