写真:JR東日本FV-E991系 編集部撮影 鎌倉車両センター中原支所にて 2022-2-18(取材協力:JR東日本)
JR東日本は,グループ経営ビジョン「勇翔2034」に掲げる環境目標の一環として,水素ハイブリッド電車「HYBARI(ひばり)」の営業運転を2027(令和9)年度末を目途に開始すると発表した.
同社は2050(令和32)年度までに温室効果ガス排出量「実質ゼロ」を達成することを長期目標としており,今回の具体策のひとつに位置づけられている.
▲水素ハイブリッド電車「HYBARI」の仕組み
水素ハイブリッド電車「HYBARI」は,水素を燃料とする燃料電池装置と蓄電池を組み合わせたハイブリッドシステム搭載車両である.高圧水素と空気中の酸素を化学反応させて発電するため,走行時に二酸化炭素を排出せず,水のみを排出する特性を持つ.
▲運行エリア
JR東日本では2022(令和4)年3月から同車両を用いた実証試験を継続し,車両性能やシステムの安定性を検証してきた.この試験結果を踏まえ,試験車両を営業仕様へと改造したうえで,2027(令和9)年度末を目途に,鶴見線と南武線 尻手—浜川崎間で営業運転を開始する.
水素の充填は鎌倉車両ベース(中原)において35メガパスカル(MPa)の圧力で実施され,1回の充填による走行可能距離は約70kmとなっている.具体的な運行計画やダイヤなどの詳細は決まり次第,順次発表される予定.
また,「HYBARI」の試験で得た知見をもとに,次世代水素ハイブリッド電車の開発にも着手する.次世代車両では,世界初の70メガパスカル(MPa)の高圧水素を採用することで,ディーゼル車両などと同等の走行距離を確保するとともに,連続する勾配線区にも対応できる走行性能の実現を目指す.これらを両立することにより,広範囲な線区で走行できる鉄道車両を実現することで2030(令和12)年度末の営業運転を目指す.
運用開始にあわせて,より短時間で高圧の水素充填が可能な地上設備の整備を進めるほか,将来的には海外で製造され国内に輸入される水素や,国内の再生可能エネルギーが豊富な地域で製造される水素の活用を検討を進めるとしている.なお,次世代水素ハイブリッド電車の概要については,今後改めて発表される.
このほか,モビリティ分野以外の水素利活用計画についても発表した.発電分野では,自社が保有する川崎火力発電所において,火力発電設備の燃料使用量の1%以上を水素に置き換えることを目標に掲げ,「水素1%調達宣言」に参画した.この計画は2050(令和32)年度の水素専焼などによるゼロカーボン実現に向けた初期段階の取組とされている.なお,同社は2026(令和8)年6月4日(木)に本宣言の第一弾参画企業として公表されている.
▲駅前・まち中での水素利活用イメージ(生成AIにより作成)
まちづくり分野においては,2025(令和7)年11月に発足し,参画している「浅間ゼロカーボンコンソーシアム」を通じた軽井沢エリアでの水素ステーション建設や,「TAKANAWA GATEWAY CITY」での燃料電池トラック・ゴミ収集車の導入,JR竹芝水素シャトルバスの運行といった地域ごとの水素実装計画が提示された.
▲JR竹芝水素シャトルバス
JR竹芝水素シャトルバスは,2020(令和2)年10月に運行を開始し,2025(令和7)年9月からは「TAKANAWA GATEWAY CITY」への乗り入れを開始している.さらに,二酸化炭素排出量削減につながる設備投資を促すための社内制度として,社内炭素価格(ICP)を現行の1トンあたり5000円から15000円へと引き上げる価格改定を行なう.非化石証書価格の上昇を反映したこの改定により,省エネルギー化に向けた設備投資をさらに進める方針である.
一部画像はJR東日本ニュースリリースから













