写真:JR東日本E235系 編集部撮影 東京総合車両センターにて 2015-3-28(取材協力:JR東日本)
KDDIとJR東日本は,JR東日本の東京総合車両センターで,車両内における5G(ミリ波)通信エリアを拡大する実証実験に成功したと発表した.屋外の基地局から放射されたミリ波を,車両内に引き込んで再放射する取り組みは国内初となる.
▲本構成のイメージ
5Gのミリ波(28GHz帯)は,広い帯域幅を活用することで高速・大容量通信を実現できる一方,電波の直進性が強く,遮蔽物の影響を受けやすいためエリア展開が課題となっていた.KDDIとJR東日本はこれまでにも,2025(令和7)年4月の新宿駅ホームにおける実証実験をはじめ,同年10月の高輪ゲートウェイ駅周辺,2026(令和8)年3月の東京駅新幹線ホーム上などでミリ波エリアの拡大を共同で進めてきた.
鉄道車両は車体が金属で覆われているためミリ波の遮蔽物となりやすく,既設の基地局や中継器の活用だけではエリア化が困難な場所が存在していたが,本実証では,ミリ波の電波が浸透しにくい鉄道車両内をエリア化するため,複数の技術を組み合わせた新たな構成を採用し,山手線のE235系に設置してその有効性を検証した.
▲ガラスアンテナの設置イメージ(左)と誘電体導波路および漏洩・ロッドアンテナの設置イメージ
実証実験は2026(令和8)年3月3日(火)から4月15日(水)にかけて実施され,線路沿線の基地局から届くミリ波を独自のシステムで車内に伝送・拡散する試みが行なわれた.システムは,プロジェクトの企画・実行・評価および全体構成の立案を担ったKDDIと,実証環境を検討・提供したJR東日本を中心に,複数の企業が技術を出し合って構築された.
車両の窓ガラスにはAGCが設計・提供した透明性に優れたミリ波用ガラスアンテナを設置し,屋外からのミリ波を受信する.受信した電波は,京セラが設計・提供した高利得アンプによって低雑音かつ高出力で増幅される.その後,日本電業工作が設計・提供した超低損失の誘電体導波路を用いて天井から電波を伝送し,同社製の漏洩アンテナとロッドアンテナを用いて車内の任意の位置へと効率的に再放射する仕組みとなっている.
実験の結果,車両の天井に設置した送信アンテナから電波を再放射することで,遮蔽の影響を最小限に抑え,車内の通信エリアを効率的に拡大できることが確認された.
▲本構成導入前後の車両内ミリ波エリアの比較
これにより,車内において通信速度1Gbpsを達成可能な通信エリアが,従来の約40%から約97%へと改善した.これまで車両の金属による電波の減衰によって離散的だった高電界エリアが,車両内のほぼ全域に拡大したことになる.
また,窓に直接後付けできるガラスアンテナは透明性が高く,景観や内装デザインを損なわずに設置できるため,設置の自由度を飛躍的に高める有用性も示された.
鉄道車両は金属が多く,一般的な屋内環境に比べてミリ波のエリア化が難しいとされているが,両社は今回の実証で得られた知見にもとづき,今後もあらゆる屋内環境へミリ波の活用を広げるとしている.
一部画像はJR東日本提供












