鉄道ファン2026年1月号(通巻777号)
『鉄道ファン』2026年1月号
2025年11月20日発売
特別定価1400円(税込)

JR東日本,鉄道設備のメンテナンス作業・工事を夜間から日中へシフト
~安全安定輸送と働き方改革を両立へ~

JR東日本E233系1000番代

写真:JR東日本E233系1000番代  編集部撮影  東大宮操車場にて  2007-9-27(取材協力:JR東日本)

JR東日本は,グループ経営ビジョン「勇翔2034」とモビリティ中長期成長戦略「PRIDE&INTEGRITY」にもとづき,「究極の安全」を堅持しつつ,鉄道メンテナンス業務の変革を進めると発表した.
 設備の老朽化にともなう作業量の増加や人手不足,従事員の就労意識の変化を背景に,「メンテナンス作業・工事といえば夜間作業」という従来の常態から,「日中時間帯にも実施」という新たな作業体系へのシフトを目指す.

JR東日本,鉄道設備のメンテナンス作業・工事を夜間から日中へシフト

 鉄道設備のメンテナンスにおいては,設備の経年による作業量の増加が喫緊の課題となっている.JR東日本管内のトンネルの平均経年は69年であり,経年50年以上の設備が全体の71%を占める.さらに,ホームドアなどのバリアフリー設備といった新たな設備整備も進められている.
 こうした状況を踏まえ,2035(令和17)年度のメンテナンス量は2024(令和6)年度比で約20%増加すると想定される一方で,鉄道工事従事員は約20%減少する見込みである.生産年齢人口が減少するなかで,従事員の継続的な確保や作業の省力化・省人化が急務となっていた.

JR東日本,鉄道設備のメンテナンス作業・工事を夜間から日中へシフト

 従来のメンテナンス作業は夜間を中心に行なわれてきたが,深夜勤務の頻度が高いことから,働き手の確保と維持が困難な状況にあった.
 鉄道工事従事員(軌道,電気関係)へのアンケート調査の結果,67%が作業を昼間にシフトしたいと回答しており,とくに「健康的な生活リズム」や「プライベートな時間確保」に対する満足度は,昼間作業に一部シフトした場合に大きく改善が見込まれる結果となった.
 日中時間帯を活用した作業体系の常態化へのシフトは,安全安定輸送の更なる向上と作業環境の改善を通じて,従事員の安全確保と働き方改革を進め,メンテナンス業務変革を実現する.

JR東日本,鉄道設備のメンテナンス作業・工事を夜間から日中へシフト

 JR東日本は,これまで地方ローカル線を中心に日中時間帯の作業・工事を順次実施してきたが,2026(令和8)年度からは首都圏での本格的な取組を開始する計画を検討する.
 まず,本格的な日中シフトの実施線区として,京浜東北線での実施を検討する.実施区間は京浜東北線(田端—田町間)とし,平日の連続した3日間の日中時間帯に作業を実施する計画.
 この際,京浜東北線は山手線の線路を使用して運転を行なう.これにより,夜間作業の回数を減らすことで,夜間帯の騒音や振動を削減し,沿線環境の改善につなげるとしている.

JR東日本,鉄道設備のメンテナンス作業・工事を夜間から日中へシフト

 トンネル補修などの工事を集中的に実施するため,まず,横須賀線(東京—品川間)での昼夜連続集中工事の実施を検討する.これは,金曜の終電から日曜の初電までの連続した時間を作業時間とする計画で,横須賀線は品川で,総武快速線は東京で折返し運転を行なう.

JR東日本,鉄道設備のメンテナンス作業・工事を夜間から日中へシフト

▲図6 トンネル補修工事のイメージ

 従来の夜間工事は実作業時間が約3~4時間であったが,昼夜連続時では列車運休により約28時間の実作業時間が確保され,一日あたりの作業量が増えることで工事期間を短縮することが可能となる.これにより,利用者へのサービス改善の早期提供につながる.
 JR東日本は,今後も乗客への影響を考慮しながら,日中時間帯作業・工事の実施線区・区間の拡大や頻度向上に取り組むとしている.

JR東日本,鉄道設備のメンテナンス作業・工事を夜間から日中へシフト

一部画像はJR東日本ニュースリリースから

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