鉄道ファン2025年11月号(通巻775号)
『鉄道ファン』2025年11月号
2025年9月20日発売
定価1300円(税込)

JR東日本・三菱電機,山手線E235系に「在来線車両向け次世代車両駆動用インバータ装置」を試験的に搭載

JR東日本E235系

写真:JR東日本E235系  編集部撮影  東京総合車両センターにて  2015-3-28(取材協力:JR東日本)

JR東日本と三菱電機は,山手線で使用されているE235系1編成に,次世代VVVFインバータ装置を試験的に搭載すると発表した.

JR東日本・三菱電機,山手線E235系に「在来線車両向け次世代車両駆動用インバータ装置」を試験的に搭載

▲次世代VVVFインバータ装置

 今回開発している次世代VVVFインバータ装置は,機器の小形軽量化を図りつつ,駆動エネルギーの削減(省エネ化)を目的として,長年にわたる技術の蓄積と最新技術を融合して開発が進められている.
 現行のE235系に搭載されているVVVFインバータ装置はSiC(シリコンカーバイド)素子が使用されているが,次世代VVVFインバータ装置ではSiC素子の半導体チップ構造とパッケージ構造を最適化した最新のSiC素子を採用することで,素子単体でのスイッチングロス(素子動作時に失われる電力)を約60%低減し,省エネ化を実現している.
 SiC素子のスイッチングロス低減により素子の発熱が抑えられ,素子を冷却する冷却器を小さくすることができる.また,装置を構成する各部品の配置を刷新し,より効率的な構成として高集積化を図ることで,装置の小形軽量化が可能となる.これにより,従来機器に比べ,約60%の体積低減,約50%の質量低減を実現している.
 VVVFインバータ装置の小形軽量化により,装置の取付方法にスライドレール方式を採用することが可能となる.これにより,艤装作業時の負担軽減・安全性向上を実現している.
 鉄道車両の省エネ化や「ゼロカーボン・チャレンジ2050」の達成に向けては,車両重量低減が求められ,車体自体の軽量化に加え,床下に搭載している機器の軽量化も重要な課題となっている.次世代VVVFインバータ装置の開発により,車両全体の重量低減を可能としたほか,SiC素子のスイッチングロス低減により,鉄道車両の省エネ化に寄与するとしている.
 現在のVVVFインバータ装置は大形の機器のため,車両の床下中央部に艤装され,床下に大きな艤装スペースを必要となる.今回の開発でVVVFインバータ装置の小形化が実現したことで,艤装スペースの削減だけではなく,搭載場所の制約が緩和され,よりフレキシブルな搭載が可能となる.これにより,車両形式や編成構成によらず床下艤装の最適化が図られる.

JR東日本・三菱電機,山手線E235系に「在来線車両向け次世代車両駆動用インバータ装置」を試験的に搭載

▲床下艤装のイメージ

 本開発により,もともとVVVFインバータ装置が搭載されていた艤装スペースを有効活用することが可能となり,そのスペースに新たなサービス機器を搭載することで,乗客サービスの向上を図る.
 また空いたスペースに車両のモニタリング機能を拡充する装置を搭載することで,車両故障などを予見し,故障防止を図ることが可能となり,さらなる車両品質向上や列車の安定輸送が可能となる.
 本開発の小形軽量化技術は,異なる車両駆動システムを使用している車両(交流車両,ハイブリッド車両,蓄電池駆動車)などにも応用できる.とくにハイブリッド車両などは客室スペースにも機器が搭載されているため,それらの機器を空いた床下スペースに搭載することで,客室スペースの拡大や座席数増加なども実現できるとしている.
 次世代VVVFインバータ装置は2026年2月(予定)まで試験搭載され,制御状態やメンテナンス性の確認などが行なわれる予定.

一部画像はJR東日本・三菱電機 共同ニュースリリースから

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