鉄道ファン2025年9月号(通巻773号)
『鉄道ファン』2025年9月号
2025年7月18日発売
特別定価1400円(税込)

「東急電鉄5000系(初代)通称『青ガエル』」が日本機械学会の機械遺産に認定される

「東急電鉄5000系(初代)通称『青ガエル』」が日本機械学会の機械遺産に認定される

一般社団法人日本機械学会は,総合車両製作所に保存されている「東急電鉄5000系(初代)通称『青ガエル』」を2025(令和7)年度の機械遺産のひとつに認定したと発表した.
 機械遺産の認定は,2007(平成19)年に日本機械学会の創立110周年を記念して発足した事業で,日本国内に現存する歴史的に意義のある「機械遺産」を8月7日「機械の日」にあわせて認定するもの.これまで新幹線0系電動客車やウォシュレットGなどが認定されており,今回で19回目となる.
 東急電鉄5000系(初代)は,東急車輛製造(現:総合車両製作所)が1954(昭和29)年に,東急東横線のスピードアップに向けて通勤用の全鋼製高速電車として開発したもの.
 この開発では同社のもと航空技術者たちが,「鋼製車の車体側面は垂直平面内に形成される」という従来の直線コンタ(直線状車体断面)の不文律を打破して,初めて曲線コンタをもつ円弧状車体断面の張殻構造を採用した.電動車を10トン以上軽量化したため,「超軽量電車」と称された.車体の軽量化は時速105kmでの走行を実現し,渋谷—桜木町間を34分で結ぶ大幅な時間短縮に貢献した.
 それまで四角い箱であった鉄道車体を丸い筒にした斬新さから「翼のない飛行機」,またその色と形から「青ガエル」の名称で親しまれた.この基本技術は,のちの小田急3000形や新幹線0系などの高速車両のみならず,在来線車両にも採用され,現在でも事実上の標準技術として広く利用されている.本機は,1954(昭和29)年から1959(昭和34)年にかけて105両が製造されたもののうち,1956(昭和31)年製造の車両であり,東急電鉄で使用されたあとは長野電鉄で再利用され,引退後に総合車両製作所(横浜事業所)で保存されている.
 2025(令和7)年度の機械遺産は上記の「東急電鉄5000系(初代)通称『青ガエル』」のほか,内田製作所(現コロナ)の「国産初の加圧式石油ストーブSB型」や鈴木自動車工業(現スズキ)の「スズライトSS」など合計6件が認定されている.

写真:日本機械学会WEBサイトから(総合車両製作所提供)

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