鉄道ファン2025年6月号(通巻770号)
『鉄道ファン』2025年6月号
2025年4月21日発売
定価1300円(税込)

鉄道総研,中央本線において「超電導き電システム」の営業線における実証試験を開始

JR東日本E233系0番代

写真:JR東日本E233系0番代  目黒義浩撮影  吉祥寺—西荻窪間にて

公益財団法人鉄道総合技術研究所(鉄道総研)では,これまで研究開発を進めてきた「超電導き電システム」について,中央本線の日野—豊田間において,本システムを適用した営業線における実証試験を開始すると発表した.

鉄道総研,中央本線において「超電導き電システム」の営業線における実証試験を開始

▲試験区間概略

 鉄道総研では,2007(平成15)年から「超電導き電システム」の開発に取り組んでおり,これまで研究所内で車両走行試験を実施してきたほか,中央本線沿いに位置する鉄道総研の日野土木実験所内に「超電導き電システム」を試験敷設し,夜間帯に車庫回線へ接続して補機電力への送電(2017年度)や,営業回線へ接続して夜間帯における試験列車(1編成)への駆動電力の送電(2019年度)を段階的に実施し,それぞれにおける電圧降下抑制などの機能を確認するとともに,営業線での運用に適したシステムへの改良を進めてきた.
 2025(令和7)年3月からは,都市圏鉄道の実環境となる中央本線の下り線に「超電導き電システム」を接続し,日野駅から八王子方面へ向かう営業列車に超電導ケーブルで電気を送る営業実証試験を実施する.
 これまでの試験結果を踏まえ,営業列車に必要な電力を供給するためにケーブルや冷却システムなどの性能向上を図る.このシステムにより,営業ダイヤに応じた複数の営業列車の力行に必要な電力の供給や,ブレーキ回生により生じた電力をほかの列車に供給するといった複合した電力を超電導ケーブルで送るなど,機能の実証を目的とした試験を実施し,超電導き電システムの課題を抽出する.

鉄道総研,中央本線において「超電導き電システム」の営業線における実証試験を開始

▲超電導き電システムの概要

 直流電気鉄道は,運行に必要な電力を3000V以下の比較的低い電圧で送るため,構造物と電力設備の離隔を小さく設計できる.また,き電回路も簡素化されるため,都市圏内の地下鉄や通勤路線で多く採用されている.しかし,大きな電流が必要となるため,電圧降下も大きくなる課題があり,電圧を維持し電力を安定供給するため,変電所の設置間隔を狭くする必要があった.
 これに対し,最先端技術を利用した超電導き電システムは,ある一定の温度以下で電気抵抗がゼロとなる超電導材料を素材に用いた超電導ケーブルと,その冷却装置から構成され,変電所から送り出した電力の損失を抑制して車両へ送ることができる.
 また,電圧降下を抑制することから,将来的に鉄道路線沿いに設置されている変電所の集約化や,回生エネルギーの有効活用,送電時のエネルギー損失の削減が期待されている.

一部画像は,JR東日本提供

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