JR東海は,水素エンジンハイブリッドシステムの試作機が完成したと発表した.
同社では,政府の「2050年カーボンニュートラル」政策を前提に,2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取組の一環として,鉄道車両から排出される二酸化炭素を実質ゼロにする技術開発を進めている.その手段のひとつとして,軽油を燃料とする従来の気動車に代わる,水素を燃料とした「水素動力車両」の開発に取り組んでいる.
水素動力車両は,HC85系のハイブリッドシステムをベースとし,動力源として燃料電池と水素エンジンを検討している.このうち,燃料電池ハイブリッドシステムについては,2023(令和5)年度から模擬走行試験を進めており,水素エンジンハイブリッドシステムについては2024(令和6)年度から開発に取り組んでいる.
水素動力車両の開発については,JR東海管内の非電化路線への導入に向け,山間部の連続する勾配を走行可能な高い出力と,長距離走行が可能な高い効率の駆動システムを実現する必要があり,HC85系のハイブリッドシステムをベースとして,動力源の燃料電池または水素エンジンから得られる電気と蓄電池の電気で走行する水素動力ハイブリッドシステムの技術開発を進める.
小牧研究施設の設備を活用し,急勾配や繰り返しの加減速といった厳しい環境を模擬した走行試験などにより,鉄道車両への水素動力の適用について検証を続ける.
水素エンジンハイブリッドシステム試作機については,産業用のディーゼルエンジンをベースに,i Labo株式会社が開発した水素エンジンとHC85系で使用している発電機,車両制御装置,蓄電池を組み合せたシステムで構成されている.水素エンジンは,高い耐久性と出力密度,および高負荷域での高い効率が期待できるほか,燃料電池と比較して低い水素純度でも運転できる特長がある.
試作機の開発にあたっては,水素エンジンを鉄道車両に適用するため,エンジンが一定の回転数で動作できるように水素エンジンを改良した.また,加速時や勾配区間走行時などの負荷状況に応じて水素エンジンと蓄電池の出力を最適化する制御を車両制御装置に実装している.
今後は,水素エンジンハイブリッドシステム単体の性能評価試験を経て,2025(令和7)年度には模擬車両と組み合わせた模擬走行試験を実施する予定.
画像はすべてJR東海ニュースリリースから