JR西日本は,おもに岩徳線で運行する一部の営業列車で次世代バイオディーゼル燃料を100%使用した長期走行試験を,2024(令和6)年9月から実施すると発表した.営業列車を次世代バイオディーゼル燃料100%で運行するのは国内初となる.
JR西日本グループでは,2021(令和3)年に環境長期目標「JR西日本グループ ゼロカーボン2050」を策定し,2050(令和32)年にグループ全体の二酸化炭素排出量「実質ゼロ」とすることを目指した取組を行なっている.この一環として,化石燃料である軽油を燃料として走行しているディーゼル車両のカーボンニュートラルを目指す取組として,次世代バイオディーゼル燃料導入に向けた実証実験を2022(令和4)年度から実施している.
2022(令和4)年度はエンジン性能試験,2023(令和5)年度は試運転での走行試験を行ない,結果が良好であったため,2024(令和6)年度は営業列車を使用して長期走行試験を行なう.
なお本実証実験は,国土交通省が公募した「鉄道技術開発・普及促進制度 令和4年度新規技術開発課題」(鉄道車両におけるバイオディーゼル燃料の導入に向けた技術開発)として,鉄道総合技術研究所とJR7社の「共同技術開発体」での実証実験をJR西日本エリアを中心に実施する.
長期走行試験では,おもに岩徳線で運行する一部の営業列車を次世代バイオディーゼル燃料を100%使用して運行し,長期的に使用した際の車両性能への影響を確認する.
期間は,2024(令和6)年9月3日(火)から2025(令和7)年1月31日(金)までを予定し,次世代バイオディーゼル燃料を使用して運行する車両には,車両の前面・側面にシールを貼付する.
「共同技術開発体」による本長期走行試験では,次世代バイオディーゼル燃料に伊藤忠エネクスが供給する燃料を選定した.この燃料は世界最大級のリニューアブル燃料メーカーのネステ(Neste)社が製造するNeste MY Renewable Diesel(RD)で,食料と競合しない廃食油や廃動植物油などを原料として製造され,温室効果ガス(GHG)排出量を削減する.RDは既存の設備をそのまま活用することが可能な「ドロップイン」燃料として,既存の車両や給油関連施設を利用できるため,脱炭素施策に係るコストを最小限に抑えてGHG排出量削減に大きく貢献できる燃料として期待されている.
このRDは,伊藤忠商事がフィンランドのネステ(Neste)社から調達し,伊藤忠エネクスがJR西日本に供給する.
今後は,JR西日本が保有するディーゼル車両の燃料を次世代バイオディーゼル燃料へ100%置き換えることを目標とし,2024(令和6)年度の試験結果を踏まえ,2025(令和7)年度以降の本導入を目指す.
画像:車両に貼り付けるシールのイメージ(いずれもJR西日本・伊藤忠エネクス 共同ニュースリリースから)