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日立,英国北部の鉄道路線で新形バッテリーを搭載したインターシティ車両の試験走行を開始

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日立,英国北部の鉄道路線で新形バッテリーを搭載したインターシティ車両の試験走行を開始

日立製作所のグループ会社である日立レールは,英国のトランスペナイン・エクスプレス(TransPennine Express),エンジェル・トレインズ(Angel Trains)と共同で,新形バッテリーを搭載したインターシティ車両の試験走行を英国鉄道網で開始したと発表した.試験は2024(令和6)年8月末から8週間にわたり,ヨーク—マンチェスター空港間,リーズ—リバプール・ライム・ストリート間の路線でバッテリー技術の試験走行が行なわれる.
 試験車両は,トランスペナイン・エクスプレス,エンジェル・トレインズ,日立レールの協力をイメージした新しいカラーリングが施されている.
 今回の試験は,英国で初めてインターシティ車両でディーゼルエンジンをバッテリーに置き換える試みである.バッテリーは,トランスペナイン・エクスプレスの「Nova1」(5両編成のインターシティ車両「クラス802」)の1編成に搭載されており,試験では,勾配での性能向上,回生ブレーキによる充電,燃料と排気ガスの削減,駅での排出量ゼロのバッテリーモードなどの実現を目指す.最大出力700kWを超えるこのバッテリーは,日立のインターシティ車両で排出ガスと燃料コストを最大30%削減できると期待されている.また,トンネル区間や複雑な分岐点上の架線を減らすことで,インフラコストの削減を図る.
 実際の鉄道網における試験が行なわれる前には,日立レールのニュートン・エイクリフ鉄道車両製造工場の試験線で低速試験走行に成功しており,これらの試験中,列車は完全にバッテリーで走行し,排気ガスを発生させなかったとしている.
 今回の試験は,英国のバッテリー産業とグリーン成長を支援することも目的としており,日立レールはサンダーランドのターンタイド・テクノロジーズと共同でこの先駆的な技術を開発するために1500万ポンド以上を投資している.
 プロジェクトには,世界初の旅客用バッテリー列車を日本で,また2022(令和4)年には欧州初のバッテリーハイブリッド列車「Masaccio」をイタリアで展開するなど,日立のグローバルな専門知識が活用されている.日立は近年,新しいインターシティ電車を発表し,2026(令和8)年からドイツを含むほかの欧州市場でこの「EuroMasaccio」を導入することを目標としており,技術の進化を急速に進めている.
 今回のバッテリーの開発は,国内外の鉄道産業にとって重要な一歩であり,日立では,このバッテリーを世界中の列車に搭載し,英国からの輸出やエネルギー効率の向上を目指す.
 世界中では多くのディーゼルエンジンを搭載した車両が運転されているが,ネットゼロの目標を達成するためには脱炭素化を進める必要がある.イタリアの「Masaccio」は,導入と同時にそれまでのディーゼル列車と比較して二酸化炭素排出量を50%削減している.ディーゼルエンジンを強力なバッテリーに置き換え,より安価な部分電化を実現できれば,世界中の鉄道を低コストで脱炭素化する道筋を作ることができるとしている.

画像は日立製作所提供

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