近鉄では,老朽化した車両を更新するため,奈良線・京都線・橿原線・天理線で新形一般車両「8A系」の運転を2024(令和6)年10月から開始すると発表した.
外観デザインは,近鉄らしいツートンカラーを踏まえ,利用客が身近に親しみを感じられるような新しいデザインとなっている.
ベビーカーやキャリーバック・スーツケースなどの大形荷物を持った乗客が周囲に気兼ねなく着席できるスペースを,1両あたり2ヵ所,車両中央の乗降扉付近に設置する.このスペースには,キャリーバックやスーツケースなどのキャスターのひとつを掛けて荷物を動きにくくするストッパーを設置する.名称は誰でも快適に・気兼ねなく座ることができる「やさしさ」を共有できる空間となるように,「やさしば」とした.
夏期や冬期の車内保温のために,駅に長時間停車する場合に,乗客が個別に扉を開閉できるスイッチや,混雑状況に応じてロングシートとクロスシートを切り換えることができる「L/Cシート」を設置する.なお,1両のなかでロングシートとクロスシートを混在して配置することもできる.
このほか,冷房能力を向上させた空調装置の採用や,扉の開閉に連動した空調制御の導入,車内温度センサの増設などにより,酷暑などにも対応したきめ細やかな車内温度の調整を図る.扉付近の乗客と着席している乗客がお互いに気を遣うことがないよう,間に大形の仕切を設置する.また,深紫外線LEDにより車内空気の除菌を行なう装置を設置する.
車内防犯対策として,車内防犯カメラを1両あたり4ヵ所設置し,非常通話装置が作動した時にその映像を乗務員や運転指令者がリアルタイムに確認して車内の状況を迅速に把握できるようにするほか,乗務員と通話ができる非常通話装置を1両あたり2ヵ所設置する.
バリアフリー対応として,各車両に1ヵ所の車いすスペース(フリースペース)を設ける.出入口の高さを下げてホームとの段差を低減し,乗降しやすくする.車内の扉上に大形の液晶ディスプレイを設置し,停車駅や列車の運行情報を多言語で表示するほか,広告も放映する.
新形のインバータ制御装置を採用することで,従来車両と比較して消費電力を約45%削減する.また,車内照明や前照灯にLEDを採用して省エネルギー化を進めて環境への負荷を減らす.
2024(令和6)年度は奈良線・京都線・橿原線・天理線向けとして4両編成×12本(48両)の計48両を投入する予定.また2025(令和7)年度は,奈良線・京都線・橿原線・天理線向けの4両編成×9本(36両)に加え,大阪線向けの4両編成×2本(8両),名古屋線向けの4両編成×3本(12両),南大阪線向けの4両編成×3本(12両)の合計68両を投入する予定.
詳しくは,近畿日本鉄道ニュースリリースに掲載されている.
画像はすべて近畿日本鉄道提供