西武鉄道は,2024(令和6)年度の鉄道事業において,過去最大の総額334億円の設備投資を行なうと発表した.
車両については,旧形車両と比較して省エネルギー化(消費電力60%削減),低騒音化した40000系3本(24両)を増備する.
「サステナ車両」として,小田急電鉄8000形と東急電鉄9000系を譲り受け,支線系(国分寺線や西武秩父線など)に導入する.2024(令和6)年度は小田急電鉄から1編成6両を譲り受け,整備・改修ののち営業運転開始を目指す.環境対策としては,引き続き照明器具の取替にあわせて,駅や車両にLED照明を導入する.
※サステナ車両は,VVVFインバータ制御などの環境負荷の少ない他社からの譲受車両で,西武鉄道の独自呼称.
このほか,2025(令和7)年度以降に予定している事業として,現在,新宿線で運行している10000系「ニューレッドアロー」を新たな車両へ置き換えるとともに,有料着席サービスの刷新することを検討する.柔軟な運行形態や利用客の着席機会の拡充など,サービス向上を図る.2026(令和8)年度中の運行開始を予定しており,詳細は決まり次第発表される.
踏切の安全性向上を目的に,従来の「線」で検知する方式(光電式)から「面」で検知する方式(2D式)とした,高規格な踏切支障検知装置の新設・更新や特殊信号発光機ATS連動化を進める.また踏切内にとり残された人を画像解析により検知し列車に知らせる「踏切異常検知システム」については,引き続き2ヵ所の踏切に新設する.
車内の防犯対策・安全性向上のため,車内防犯カメラの整備を進める.2025(令和7)年度末までに全車両への車内防犯カメラ設置を目指すほか,従来の記録式カメラ設置車両はリアルタイムに映像を確認できる通信式カメラへの置き換えを進め,2026(令和8)年度末までに通信式カメラ設置100%を目指す.また,事故や列車運行への妨害行為などが発生した場合の状況確認や原因究明を目的に,列車運行中の前方と後方映像を記録するドライブレコーダーの全編成への導入に向け,引き続き整備を進める.
新宿線の連続立体交差事業については,中井—野方間連続立体交差事業(地下化)において,引き続き駅部や一般部の仮設工事と駅部の掘削工事を進める.
東村山駅付近連続立体交差事業(高架化)では引き続き,ホームとホーム上屋の構築工事,高架橋上の軌道・電力・信号設備工事,一般部の高架橋構築工事を行なう.
井荻—西武柳沢間の連続立体交差化計画については,事業主体である東京都や地元自治体と協力し,工事着手に向けた準備を進める.野方—井荻間の連続立体交差化計画については,事業主体である東京都や地元自治体と協力し,引き続き,連続立体交差化計画の早期事業化に向けた準備を進める.
狭山市の入曽駅周辺整備事業の一環として,入曽駅東西自由通路・橋上駅舎整備工事を実施する.入曽駅周辺整備事業では,入間小学校跡地の複合形商業施設整備,東口・西口それぞれの駅前広場の整備も計画されている.
西武新宿駅と東京メトロ丸ノ内線新宿駅をつなぐ新たな地下通路については,早期実現に向け,具体的な検討や関係者との協議を進める.
次の時代を見据えた技術革新への基盤づくりとして,タッチ決済対応のカード(クレジット・デビット・プリペイド)や,同カードが設定されたスマートフォン等を活用した乗車サービスの実証実験を,2024(令和6)年度後半にターミナル駅,観光地周辺を中心に21駅にて開始する.
無線式列車制御(CBTC)システム実証試験については,多摩川線での走行試験を引き続き実施する.走行試験での検証結果や鉄道各社の動向などを踏まえ,次世代信号システムの方式を決定し,2030年代に全線での導入を目指す.
運行管理システム(SEMTRAC)の更新については,池袋線系統に続き,新宿線系統で運用を開始する予定.新システムでは運転司令所の運行表示盤を高性能化し,気象条件による運転規制や各駅のカメラ映像などを一元的に把握することが可能となり,荒天時や異常時における対応力を向上させる.
運行情報と連携しているホーム自動案内放送では,列車接近時の英語放送を追加したほか,優等列車の途中停車駅や遅延情報などの案内が可能となる.
ホームドアなどのバリアフリー設備の整備については,鉄道駅バリアフリー料金制度を活用し,整備を引き続き進める.
これまで整備を進めてきた1日あたりの利用者数10万人以上(2019年度実績)の6駅のほか,2023(令和5)年度からは10万人未満の駅への整備に着手しており,引き続き整備を進める.2024(令和6)年度は,練馬高野台駅と石神井公園駅の稼働を目指す.
このほか,運行情報提供設備の整備やエレベータ・エスカレータの更新を進める.
詳しくは,西武鉄道のニュースリリースに掲載されている.
一部画像は西武鉄道提供