JR東日本は,「羽田空港アクセス線(仮称)」の工事着手前の試掘調査において,高輪築堤の石積が確認されたことから,一部の現地保存に向けて,羽田空港アクセス線(仮称)の線路縦断線形の計画変更を行なうと発表した.
遺構が発見されたのは田町駅周辺で,2022(令和4)年7月から2023(令和5)年6月に実施した工事着手前の試掘調査で石積の一部を発見し,調査や委員会での検討の結果,高輪築堤と確認された.その後,2023(令和5)年8月から高輪築堤調査・保存等検討委員会(以下委員会)が開催され,遺構への影響軽減検討や調査・保存の方針が検討されてきた.
現地保存については,羽田空港アクセス線(仮称)の下り勾配の開始地点を当初の計画から約100m品川方に変更することで,東海道線の線路下に存在すると想定される高輪築堤の一部を現状のままで保存する.この計画変更で,高輪築堤への支障範囲が延長約160mだったものが,延長約100mを現状のままで保存できると想定している.
高輪築堤の一部現地保存に向けて,羽田空港アクセス線(仮称)の線路縦断線形の計画変更を行なう.計画変更に必要となる環境影響評価手続きや工事計画の変更手続きを,国,東京都などの関係行政と連携して進める.
記録保存については,一連の文献調査と現地調査の結果,雑魚場架道橋の橋台には,鉄道開業時の第5橋梁の橋台が残存している可能性があること,また田町駅付近は江戸時代後期に構築された薩摩台場の上に位置している可能性があることが明らかとなった.
こうした調査結果を踏まえ,2024(令和6)年3月の委員会において,「羽田空港アクセス線(仮称)」に支障する範囲の遺構(高輪築堤,第5橋梁の橋台,薩摩台場)については記録保存とする方針が示された.支障する遺構については,工事を進めながら,港区教育委員会と連携して,考古学・鉄道史・土木史などの諸分野の知見にもとづき,慎重かつ丁寧な記録保存調査を進める.
「羽田空港アクセス線(仮称)」は,既存の鉄道ネットワークを活用し,多方面からの羽田空港へのダイレクトアクセスを実現するもので,「東山手ルート」と「アクセス新線」の建設を2031(令和13)年度の開業を目指して進めている.
「東山手ルート」・「アクセス新線」は,現在休止している大汐線の橋りょうや高架橋などの既存ストックを有効活用し,東京駅と羽田空港の直結,宇都宮線・高崎線・常磐線方面からの所要時間短縮や乗換解消・低減など広範なエリアからの空港アクセスを改善する.現在,鉄道を利用した場合,東京駅から羽田空港までの所要時間は30分程度となっているが,開業後は約18分で到着することが可能となる.
画像はいずれもJR東日本ニュースリリースから