JR貨物は,2024(令和6)年度の事業計画を発表した.
鉄道施設の整備に関する計画では,既存アセットを最大限活用しつつ,安全基盤の強化・安定輸送を追求した脱線事故対策などのハード対策や鉄道施設・機器の整備・更新を行なう.鉄道事業の基盤強化として,車両故障による輸送障害を未然に防止するため老朽車両の取替を計画的に進める.九州地区では,交流回生ブレーキを装備したEF510形300番代の量産車を引き続き導入する.また,次世代コンテナ車の開発に向けて,必要な技術開発と検証を進める.
輸送設備の維持更新として,まくらぎの鉄まくらぎ化や,土木設備の更新,運転保安・電車線・電力設備・連動装置の更新を実施する.保安・防災・安定輸送対策として,偏積防止対策や輸送障害への対応強化にともなう駅設備改良,仙台貨物ターミナル駅・沼津駅の移転工事と新技術の導入を行なう.
顧客ニーズの把握と営業提案領域拡大の一環として,海上コンテナ輸送の拡大に向け,既存の輸送区間(東京貨物ターミナル駅—盛岡貨物ターミナル駅間)の往復マッチングや新規区間での輸送ニーズ把握による海上コンテナ輸送の拡大検討を実施する.
需要が高い31ftコンテナの取扱量拡大を図り,従来の利用主体であった特定の顧客による往復輸送に加え,片道輸送の需要を取り込んで異なる顧客による往復輸送を実現するため,札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・福岡といった大都市圏を中心として,JR貨物・利用運送事業者・コンテナ保有会社(リース会社など)によるコンソーシアムを構築していく.またハード面の取組として,貨物駅のコンテナホーム改良や路盤の強化,キャパシティ拡大に向けたコンテナ留置スペースの見直し,既存施設の改良による積替ステーションなどの荷役施設と輸送開始に必要な機材を整備する.
従来の貨物鉄道輸送が得意とする800km以上の長距離帯とあわせて,トラック輸送が主流である中距離帯(600km前後)での鉄道利用増加が見込まれることから,同距離帯の輸送力を増強する.2024(令和6)年3月のダイヤ改正の効果をトレースするとともに,今後もリードタイムの緩和の動きや物流量の変化を把握・分析し,内航海運行路の輸送実態も踏まえた上で対象区間を見極めながら,既存のアセットを最大限活用し中距離帯でのネットワークを整備する.
収支構造改革の一環として,列車編成通知書の自動発行やトラックドライバー用アプリ(T-DAP)の活用による駅作業の省力化,DF200形やフォークリフトのアイドリングストップ,フォークリフト用のリトレッドタイヤ使用率拡大などの費用削減を進める.
災害発生時の対応力を強化するため,主要幹線の長期寸断時に,代行輸送体制への迅速な移行を図るべく,鉄道以外の輸送モード(トラック・船舶代行)を平常時から活用する「フェーズフリー」に取り組む.鉄道によるう回ルートの設定が困難である山陽本線の不通時を想定し,トラックや船舶での代行輸送と鉄道輸送の結節点として新南陽駅の拠点化を進める.
他線区では,災害時のう回列車運転に備えた機関車運用の柔軟性を確保するため,仙台総合鉄道部配置のすべてのEH500形に日本海縦貫線での運行を可能とする改造を2024(令和6)年度も継続して順次実施する.あわせて,吹田機関区の北陸本線乗入れをはじめとした運転士の乗務線区拡大などにより,災害時をはじめとする輸送障害への対策を強化する.
技術革新の加速化や労働・雇用環境などの社会情勢の変化に対応するため,新たな技術の研究開発,活用を引き続き積極的に進める.省力化に向けた車両装置の要素開発として,「電気・空気管自動連結機構」などの開発を進める.あわせて,大形コンテナネットワークの拡充に向けた新しい荷役システムの検討や次世代低床貨車の開発,速達性に優れた電車形貨物列車の開発検討に着手しつつ,高速道路でのトラック自動運転による貨物輸送などの新しい物流システムとの連携も検討する.また,鉄道物流におけるイノベーションを目指した新幹線による貨物鉄道輸送の実現に向けて,国や関係者と連携しながら,貨物新幹線車両などの検討を進める.
海外事業については,鉄道事業の新たな柱としての成長を目指し,特にタイとマレーシアに重点を置いて活動する.タイでは,危険品輸送についての合弁事業実現に向けた取組をはじめ,鉄道車両検修での技術提携やコンテナヤードの運営,さらには運転士養成での事業化を目指す.マレーシアにおいても,車両検修設備やコンテナヤードの運営に関して現地企業との協業を検討する.このほか,国土交通省や国際協力機構(JICA)調査をはじめ,海外からの研修や視察への対応も引き続き行なう.
詳しくは,JR貨物のページ(2024年度 事業計画/2024年度 事業計画(概要))に掲載されている.
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