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南海,社内ネットワークを利用した「社内内回り方式」によるタッチ決済を導入

南海電気鉄道8000系

写真:南海電気鉄道8000系  編集部撮影  住之江検車区羽倉崎検車支区にて  2008-2-1(取材協力:南海電気鉄道)

南海電気鉄道とQUADRACは,一部の駅において,南海電鉄が保有するネットワーク(社内ネットワーク)を利用した「社内内回り方式」によるタッチ決済を導入したと発表した.「社内内回り方式」を活用したタッチ決済の採用は国内初の取組となる.

 南海電鉄では,「公共交通事業のサステナブルな経営」を実現するため,デジタル技術の実装による新しい価値を提供する取組のひとつとして「タッチ決済による交通利用」を進めている.クレジットカード1枚で移動から買い物までできるサービスの提供で,インバウンドをはじめとする利用客がより便利に乗車できるよう,大阪・関西万博が開催される2025(令和7)年までに「社内内回り方式」に対応した,タッチ決済が利用できる駅を順次拡大していく予定.
 これまでのタッチ決済サービスでは,クレジットカード情報を伝送するネットワークはQUADRACが提供する「モバイル通信(閉域網)方式」を採用してきたが,公衆キャリアの回線を利用するため,外部の通信環境に左右され,決済エラーの発生などの課題があった.今回,既存の社内ネットワークを活用することで,これまでよりも安定した通信品質が見込まれる.

南海,社内ネットワークを利用した「社内内回り方式」によるタッチ決済を導入

▲現行(黒矢印)と変更後(赤矢印)のシステム構成

 「社内内回り方式」の導入にともない,一部の駅の読取リーダをクレジットカードのセキュリティ基準「PCI-P2PE」に対応した新しい読取リーダに置き換えた.これにより,クレジットカード番号等の情報は物理的な攻撃から守られ,データ改ざんされることなく安全に暗号化される.このような「PCI-P2PE」による高度な対策は,社内ネットワーク環境下でも,これまで以上にカード情報漏洩や不正アクセスなどのリスクを最小限に抑え,より一層信頼性の高い決済環境を提供するために有効としている.
 南海電鉄では駅遠隔制御システムを採用しており,駅務機器の状態確認や操作をリモートで可能となっている.社内ネットワークに切り替えることで,今後,タッチ決済時の入出場エラー処理を駅遠隔制御システムで行なうことを目指す.
 「社内内回り方式」の導入状況については,2023(令和5)年7月に南海本線泉佐野駅の改札機に「PCI-P2PE」に対応した読取リーダを設置し,社内内回り方式に切り替えが完了している.「PCI-P2PE(Point-to-Point Encryption)」とは,加盟店に設置された決済端末でクレジットカード情報を読み取った瞬間に暗号化し,暗号化した状態のまま復号環境(決済センター)に伝送する仕組みを認定対象としたセキュリティ基準で,QUADRACは2022(令和4)年6月に「PCI-P2PE」の認証を取得済みである(鉄道の運賃収受システムでの認証取得は国内唯一).
 今後は2023(令和5)年度中に,タッチ決済を利用可能な改札機すべてを,上記の方式に切り替える予定で,大阪・関西万博が開催される2025(令和7)年に向け,同方式を用いて順次利用可能駅を拡大する.

一部画像は南海電気鉄道・QUADRAC 共同ニュースリリースから

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