東急電鉄と東京地下鉄(東京メトロ)は,相互直通運転を行なっている東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線の信号保安システムについて,2028(令和10)年度の稼動を目指して,同一の無線式列車制御システム(CBTCシステム)に更新すると発表した.信号保安システムの更新について,相互直通運転路線間で連携し,CBTCシステムを同時期に導入する取組は,国内で初めての事例となる.
「CBTCシステム」は,列車の安全・安定運行を確保するために,無線通信技術を活用して列車の位置や速度を連続的に把握し,列車間の安全な間隔を確保する新方式の信号保安システムである.先行列車が進行すると,後続列車はその進行距離に応じ,従来のシステムよりも速やかに進行可能となるため,高い遅延回復効果が得られるとともに,システムを構成する設備全体を2系統設けることで安定稼動につながり,運行の安定性が向上する.加えて,従来の信号保安システムと比較して省設備化が図られることにより,メンテナンス性の向上や環境負荷を低減する.
東京メトロでは,丸ノ内線において,2018(平成30)年度に「CBTCシステム」の安全性評価を行なうため仮設設備での試験運転を実施し,2022(令和4)年度から実運用へ向けた本設備での走行試験を営業線運転終了後に開始している.2024(令和6)年度に丸ノ内線,2026(令和8)年度に日比谷線での稼動が予定されている.
東急電鉄では,踏切制御を高度化し,列車速度に応じて踏切の警報開始地点を可変することで,とくに列車が遅延し低速度での運転時に踏切遮断時間の改善も見込まれることから,大井町線においてもCBTCシステムを導入し,2031(令和13)年度に稼動する予定となっている.
相互直通運転を実施している2路線がともに共通化した「CBTCシステム」を導入することで,双方の路線で遅延回復効果が得られ,運行の安定性が向上する.また,相互直通運転時に,車両に各路線の信号保安システムに対応した装置を搭載する必要があるが,同一の車上装置にて両線を相互に運行することが可能となり,ライフサイクルコストの効率化も図ることができる.さらに,現行システムとの接続を考慮せずに両線の新システム同士を接続することができるため,両社相互に導入コストを低減する.
両社では,そのほかの相互直通運転路線においても信号保安システムの統一を目指すとともに,鉄道におけるさらなる安全性・安定性向上に向けて引き続き連携を図るとしている.
一部画像は東急(株)提供