日立製作所は,鉄道設備の輸送障害発生時において,指令員による早期の障害原因の特定や復旧方法の指示を可能とするAI支援システムを開発し,JR東日本とともに現場実証を経て,実用化したと発表した.
このシステムは,膨大な過去の記録から類似事象を判定し抽出するリコメンドAI技術(特許出願中)を活用した日立の「オペレーション・リコメンデーションシステム」をベースに,JR東日本が蓄積する障害対応の記録から類似事象を判定するもの.原因の絞り込みや復旧方法の提案といった対応内容などは,現場の後方支援や指示を司る指令員向けに自動で提示し,判断を支援する.とくに,経験や知識だけでは,その類似性に気付くことが困難な発生頻度の低い稀な事象についても,独自の学習モデルにより,類似事象を抽出し提示できる.
JR東日本と日立は,2020(令和2)年3月から共同で本システムの実証実験「PoC」を行ない,その有効性が確認できたため,2023(令和5)年4月から山手線などの首都圏在来線にて本番運用を開始する.
「PoC」では,これまで復旧に約2時間を要した事象に対して,1時間程度に短縮ができる結果を得るなど,50%程度の復旧時間の短縮を確認している.
障害発生時,鉄道設備の現場を直接確認しにくい中央の指令員は,経験・ノウハウにもとづく情報収集と判断が重要となる.一方で長年のノウハウの継承には時間を要することや,とくに発生頻度の低い障害については,熟練の指令員でも経験を積むことが困難なため,難しい判断・対応が求められる.
JR東日本では,自然災害や設備故障にともなう輸送障害の発生時に,デジタル技術を活用して更なる早期復旧をめざした取組を行なっており,日立と共同で進める今回の取組は,その一環として行なわれる.
今回,設備の状態確認を実施すべき箇所や原因の絞り込みを行なう,AIを活用した輸送障害時の復旧支援システムを実用化し,首都圏に導入を開始する.
今回のAIを活用した「オペレーション・リコメンデーションシステム」や,取組ノウハウ・実績は,さまざまな産業分野における課題解決に応用できるとしており,今後は幅広くその活用を検討していく.
一部画像は日立製作所提供