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「補強盛土一体橋梁」を西九州新幹線の7橋で導入

「補強盛土一体橋梁」を西九州新幹線の7橋で導入

▲図1:原種架道橋(西九州新幹線 諫早—長崎間にて実用化)

独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)は,公益財団法人 鉄道総合技術研究所(鉄道総研)との共同研究により,走行安全性,耐震性,経済性,維持管理性に優れた「補強盛土一体橋梁」を西九州新幹線の7橋で採用したと発表した.

「補強盛土一体橋梁」を西九州新幹線の7橋で導入

▲図2:従来の橋梁の概要と課題

 このうち1ヵ所の橋梁では,40mまでの架橋に適用可能な「長スパン用補強盛土一体橋梁」(写真)を初めて実用化した.補強盛土一体橋梁の新幹線における採用実績は,これまで北海道新幹線の1橋であったが,西九州新幹線では本格的な導入となった.
 これまでの橋梁(図2)では,地震時の被害や支承部の維持管理コストの増加などの課題があったが,鉄道総研は,この課題を解決するために,桁・支承部・橋台壁・盛土を一体化する「補強盛土一体橋梁」を開発した.

「補強盛土一体橋梁」を西九州新幹線の7橋で導入

▲図3:補強盛土一体橋梁の概要と特徴

 特橋台壁背面の盛土をセメント改良し補強することで,背面の盛土の沈下防止や地震時に作用する土圧の低減を可能にし(図3の1),桁と橋台壁を一体化したラーメン橋梁形式とすることで,地震時に弱点箇所となる支承部の省略が可能となり,建設コストや維持管理コストを削減できる(図3の2).
 また,盛土とラーメン橋梁を網目状の補強材(ジオテキスタイル)にて一体化させることで,走行安全性や地震時に一体となって挙動することにより耐震性が向上する(図3の3).

「補強盛土一体橋梁」を西九州新幹線の7橋で導入

▲図4:長スパン用補強盛土一体橋梁の概要と特徴

 「長スパン用補強盛土一体橋梁」は,従来の補強盛土一体橋梁の桁において,長スパンには適していない鉄筋コンクリート(RC)構造であったため,長さ20m以下の片側1車線の道路等の交差部への適用に限定され,それ以上のスパンの場合には従来の桁・橋台形式の橋梁が採用されていた.そこで「補強盛土一体橋梁」の長所を活かしつつ,適用範囲を拡大するために,20mを超える「長スパン用補強盛土一体橋梁」を両者で開発した.
 特徴は,桁の構造を20m以上の橋梁には適していないRC構造から,プレストレストコンクリート(PC:あらかじめ鋼材を通じて力を加えたコンクリート)構造とした(図4の4).PC桁はあらかじめ工場で製作し,クレーンで現場に構築されている橋台の上に架設する.

「補強盛土一体橋梁」を西九州新幹線の7橋で導入

▲図5:長スパン用補強盛土一体橋梁の橋台壁とPC桁の接合方法

 PC桁と橋台壁との接合強度を確保するため,フランジの切り欠きや,橋台壁とPC桁の鉄筋を組み合わせてコンクリートを打設する接合構造を新たに開発した(図5).これらにより,スパン40mまでの架橋を可能とした.

図1:JRTT鉄道・運輸機構提供
図2〜図4:JRTT鉄道・運輸機構 公益財団法人鉄道総合技術研究所 共同ニュースリリースから

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