日立製作所は,車椅子や白杖などの利用者を対象とした,駅係員による列車乗降サポート業務をトータルに支援する「移動制約者ご案内業務支援サービス」について,クラウドサービスとしての提供を開始したと発表した.
本サービスは,電話や口頭伝達を主とする列車乗降サポート業務のプロセスを電子化し,利用受付から駅係員間の連絡・引継ぎ,乗降サポートの実績管理といった一連の業務をスマートデバイス上で完結できるシステムを提供するもの.これまで紙の連絡票への記入・管理で行なわれていたアナログ作業を最小化し,スマートデバイスで情報をリアルタイムに共有することで,ヒューマンエラー発生の低減と駅係員の対応効率化,負担の軽減を図る.
本サービスの前身となるシステムは,日立製作所が西武鉄道との協創により,デザイン思考をもとに業務課題を深く理解したうえで,新たな事業やサービスをともに協創するための手法である「Exアプローチ」を適用して開発した.今回,システムのSaaS(Software as a Service)化を行ない,初期導入の負荷を軽減し迅速な立上げと,鉄道事業者側のシステム全体の総所有コスト(TCO)改善に寄与する.
また,一連の連絡業務がデジタル化されたことで,これまで把握が難しかった乗降駅双方の案内業務履歴を一元的に管理できるため,社内全体でノウハウとして共有し,案内業務のサービスが向上する.履歴データは,列車乗降サポート業務を必要とする乗客の利用状況の分析や,利用実態の調査報告などに幅広く活用できるため,さらなる公共交通機関の安全安心な環境整備に貢献するとしている.なお,本サービスは,2022(令和4)年6月からJR九州の「JR九州あんしんサポートネット」のシステム基盤として提供が開始されている.
今後は鉄道事業者のほか,バスや空港,公共施設などにおいて,本サービスを応用した新しい案内サービスの提供を図るなど,公共交通機関利用者の安全安心な移動を実現するため,取組を進める.
画像はいずれも日立製作所提供