JR東海では,これまで地上装置で実現してきた架線電圧を維持する機能を,車両側で実現する技術を開発したと発表した.
東海道新幹線では利用客の増加にともない,順次輸送力を増強し,2020(令和2)年3月から「のぞみ12本ダイヤ」を実施している.高密度なダイヤで列車を運転する際に発生する架線の電圧低下を抑制するために,変電所の増設に加えて電力補償装置の導入など地上の電力設備の増強を進め,現在,東海道新幹線の沿線に電力補償装置が21台設置されている.
N700Sに搭載する新機能は,主変換装置のソフトウェアを改良することで,これまで地上の電力補償装置などで実現してきた架線の電圧低下を抑制する機能を車両側で実現するもの.
列車本数が増えるにつれ架線の電流の位相が遅れ,電圧が低下する現象について,電流の位相の遅れを小さくし,電圧の低下を抑制する機能を搭載する.なお,車両で架線電圧を維持する仕組みは,世界初の技術となる.
この機能により,一部の変電所や電力補償装置の削減や,東海道新幹線の全編成に導入が完了した場合では,約1割の変電所と約半数の電力補償装置が削減できる見込みとしている.また,電気使用量を年間約2千万kWh低減できるほか,約3億円の電気料金と約1万tに相当する二酸化炭素排出量を削減できる見込みとしている.
今後は,N700Sの一部の営業車両に上記の機能を搭載し,2023(令和5)年2月まで機能確認試験を実施する.試験の結果を確認後,ほかのN700Sにも機能の搭載を拡大する予定.
一部画像はJR東海ニュースリリースから