大阪市高速電気軌道は,御堂筋線・中央線主要駅での「地下空間の大規模改革」にともなうリニューアルについて,御堂筋線の淀屋橋・本町・大国町・天王寺駅,中央線の大阪港・弁天町・本町・谷町四丁目・森ノ宮の計9駅のデザインを発表した.
「地下空間の大規模改革」は,老朽化した駅の壁・天井の剥離や落下などの防止対策など,駅の安全性を確保する工事にあわせて,魅力的なデザインや機能を充実させることで,駅自体を楽しめる空間として提供する取組である.2019(令和元)年8月には御堂筋線の梅田・心斎橋など5駅のデザインを発表し,リニューアル工事を進められている.今回の9駅についても,それぞれ駅の地域性・歴史性と魅力を徹底して深掘りして,より多くの利用者に喜んでもらえるデザインとする.
また,大国町・大阪港・森ノ宮の3駅では,デザインだけでなく,駅に来ることを目的とした展示スペースや展望デッキを設置する.
淀屋橋駅は,「アーチ構造の象徴」をデザインコンセプトとし,古くから政治・経済の中心地として大阪を支えてきたこのエリアの伝統と格式を,重厚感のある石材やモノトーン基調で表現する.現状のシャンデリアを記憶のモニュメントとして踏襲しつつ,これまでの資産をモダンに再生する.
本町駅は,「インターセクション」をデザインコンセプトとし,南北の大動脈の御堂筋線と東西へ発展する中央線の2路線が交わり,万博とその先の未来をつくることをコンセプトに,高い機能性と象徴性の調和する駅を目指す.
御堂筋線ホームは,ダブルアーチの天井形状と柱の造形を活かしながら,高級感のある素材と最新の照明計画により,モダンとクラシックが共存するデザインとする.また,中央線ホームは,御堂筋線と同じく高級感のある仕上げ素材と,最新の照明計画を採用する.
なお,御堂筋線と中央線をつなぐ通路や階段などの動線は,万博開催中や会期前後の交通量の変化なども加味しながら,より使いやすい駅となるよう徐々に改装を進める.
大国町駅は,「地下構造が美しい駅」をデザインコンセプトとする.御堂筋線と四つ橋線の4つの線路がひとつの空間で行き交うという大阪市高速電気軌道でもここだけにしかない駅であり,これらを支える地下構造の美しさを強調したデザインとする.列車が走る軌道の天井は,美しさをより際立たせるライティングで魅力的な空間に仕上げる.
南のコンコースには車両模型や車両の歴史に関する展示スペースを設置する.実際に走る車両を展示スペース奥の窓から見える構造とすることで,模型と実際の車両を同じ空間で楽しめる計画とする.
天王寺駅は,「柱の美,格子の美,光の美」をデザインコンセプトとし,ターミナル駅を象徴する天井のグリッドと,連続する柱の美しさを照明の灯りで際立たせながら,よりクリーンな空間とする.また照明の当て方や素材感により,立体感のある柔らかな空間に仕上げる.
大阪港駅は,唯一海を臨む地上駅としてその臨場感を活かし,エンターテインメント性,観光地としての特性をわかりやすく演出するため,デザインコンセプトを「海」とし,大海原を泳ぐ大形の海洋生物をイメージして駅舎のデザインに活かす.
ホーム屋根には膜構造の透過性や質感を活かしながら,曲線を効果的に用いて,駅空間の魅力を演出する.また,ホーム西側に新たに展望デッキを設置し,先端にパラソルやクジラの潮をイメージしたシンボルを置き,海をより近くに感じられるような展望スペースを計画している.
弁天町駅は,「ステーション アート」をデザインコンセプトとし,万博やIRをひかえ,駅で乗り換える利用客の増加を考慮し,明るく使いやすい駅とする.また,大形デジタルサイネージを取り入れることで,照明や映像による演出を行ない,アートを体感できる空間に駅を昇華させる.
谷町四丁目駅は,「ジャポネスク」をデザインコンセプトとする.歴史的にも精神的にも大阪のシンボルである大阪城に最も近接する駅として,和を柱や壁のグラフィックとして表現し,次世代への新たな美として世界へ発信する駅をテーマとする.
森ノ宮駅は,「フォレスト」をデザインコンセプトとし,自然のある大阪城公園に隣接した立地を活かし,柱などの随所に木の枝の表現を取り入れる.また,家族連れや訪日観光客など,すべての人々が集い親しむ,開かれた森のような駅を目指す.
西のコンコースには,今回のリニューアル工事で役目を終える御堂筋線のシャンデリアなどの歴史的価値のあるものを展示するスペースを設置する.
なお,大阪城の東部地区では新たな大学の開校をはじめとしたまちづくりが計画されており,また国際的な観光拠点である大阪城公園に駅が隣接していることから,幅広い世代・さまざまな人々に利用してもらうとともに,大阪市高速電気軌道の歴史を広く知ってもらう機会をつくる.
画像はいずれも画像はいずれも大阪市高速電気軌道提供