JR貨物は,2022(令和4)年度の事業計画を発表した.
鉄道施設の整備に関する計画では,「安全の確立」,「安定輸送の確保」に資する脱線対策などのハード対策や鉄道施設の整備,更新を継続して実施する.車両部門では,故障による輸送障害を未然に防止するため老朽車両の取り替えを計画的に進め,引き続きEF210形300番台・DD200形の新製を行なう.九州地区については九州用に仕様変更したEF510形を導入することから,各種走行試験を引き続き実施する.また,中央西線にはEH200形を導入する.
輸送設備の維持更新として,まくらぎの鉄まくらぎ化や,土木・電気設備の更新,電車線設備・連動装置の更新を実施する.経営体質の改善では,列車編成通知書の作成システムと運転支援システム(PRANETS)を活用した運転士への情報提供や,輸送系基幹システムの改良・更新により,駅のスマート化を図る.コンテナ持込・持出時間予約機能を有したトラックドライバー用アプリ(T-DAP)の試運用を全国6駅で開始し,駅構内荷役作業を可視化すること,鉄道貨物を利用する運送事業者の作業利便性向上や荷役作業の安全性向上・省力化を図るとともに,トラックドライバー用アプリの全国展開へ向けた準備を引き続き行なう.このほか,車両検修基地の生産性向上のための大規模設備改修も実施する.
保安・防災・安定輸送対策として,偏積防止対策や建物などの耐震補強,レールゲートなど貨物駅の結節点機能強化・高度利用化を図る.また,仙台貨物ターミナル駅・沼津駅の移転工事と新技術を導入する.
災害発生時のBCP(事業継続計画)を強化するため,主要線区で策定済みの代替輸送力・輸送手配のシミュレーション(トラック・船舶代行,迂回輸送など)の実効性を担保する取組として,BCP対応拠点の強靭化を行なう.輸送機材の冗長性確保の一環として,日本海縦貫線の迂回運転に備えたEH500形6両の改造を2021(令和3)年度までに完了したが,2022(令和4)年度中に合計18両の改造を完了する.また,隅田川機関区の八王子乗入れの開始など,う回列車運転に備えた運転士の乗務線区拡大を継続実施するほか,シミュレータを活用し大規模災害時のう回運転などを想定した教育を開始する.
技術革新の加速化と社会情勢の急速な変化にともない,10年後を見据えた社会・経済の変化に対応し業務・サービスを抜本的に改革していくため,新たな技術の研究開発や活用を積極的に行なう.
労働集約形の作業が多く存在する貨物駅の作業の見直しとして,「駅構内トラックの隊列走行」,「入換機関車の遠隔操縦」,「フォークリフトの遠隔操縦・セミオート機能」,「駅構内コンテナ留置位置の最適化・自動指示化」,「コンテナ立体自動倉庫」,「積付画像診断」などについて,将来のスマート貨物ターミナルの実現や移転後の仙台貨物ターミナル駅への導入を視野に入れて検討・開発を進める.
省力化に向けた車両装置の要素開発として,「次世代緊締装置」,「電気・空気自動連結機構」などの検討・開発や,AI・IoT,ビッグデータの活用研究として,「車両状態監視システム」,「最新通信規格(5G)の活用」などの研究開発も進める.
海外事業については,タイで一定の需要が見込まれ,かつJR貨物のノウハウを活かすことができる危険品の鉄道コンテナ輸送を事業として実現するため,支援を行なう.あわせて,2021(令和3)年に設置した駐在員事務所を活用し,現地関係事業者との協業や合弁についての検討・準備を進める.また,タイを中心としたマレーシア・カンボジア王国・ラオス人民民主共和国などとの国際鉄道輸送に関する事業化の可能性についても情報収集を行なう.
インドでは,NEDOの支援による日系企業と共同で,鉄道によるLNG輸送・供給事業の実施に向けた調査・検討を進めるとともに,LNGコンテナ輸送の実現へ向けたDFC(貨物専用鉄道)運営公社やインド国鉄への支援について検討する.また,JICAの鉄道安全プロジェクトを継続して実施する.このほか,コンゴ民主共和国へのディーゼル機関車整備能力強化を目的としたJICAのプロジェクトへの技術支援について取り組む.
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