JR東日本は,ドライバレス運転実現に向け,車両前方のステレオカメラによる「障害物検知システム」を開発しているが,2022(令和4)年度中にカメラと画像処理装置の小形化を行ない,走行試験を実施すると発表した.
JR東日本研究開発センターの先端鉄道システム開発センターでは,列車の安全性向上や将来のドライバレス運転で必要とされる技術として,車両前方にステレオカメラを搭載して障害物をリアルタイムで自動検知する「障害物検知システム」を開発している.
これは,車両の前方に搭載した2台のカメラ画像から,画像処理装置がステレオカメラの技術を用いて画像解析を行ない,物体までの距離を計算することで,列車が走行する線路内の障害物をリアルタイムに検知するもの.
自動車などでは,前方の障害物検知システムは実用化されているが,鉄道車両の場合,列車の停止距離が自動車と比較して長いことから,より遠方の障害物を検知する必要がある.開発したカメラと画像処理装置を用いた走行試験において,遠くまで撮影した画像を解析することで,物体までの距離を計算できることが確認されている.
また,鉄道車両に適した専用カメラを開発することで,車両の揺れの影響が少ない画像を取得でき,障害物の誤検知も少なくなったとしている.また,トンネルや夜間など,明るさの変化に対応できる画質調整ができ,カメラと画像処理装置で機能を分担することで,障害物を検知する処理速度が向上した.
本システムは,209系「MUE-Train」や,京浜東北・根岸線の車両に搭載し,2020(令和2)年2月から本線上で走行試験を実施している.試験では,カメラや画像処理装置の性能調整を行ない,首都圏において車両前方の障害物検知ができるよう開発が進められている.
これまでは,車両に適したカメラの開発や画像処理の精度向上のため,首都圏で走行試験を実施してきたが,2022(令和4)年度にはカメラと画像処理装置の小形化を行ない,走行試験を実施する.さらに2023(令和5)年度からは営業列車に搭載し,通常走行時のデータの蓄積や機能改善を継続することで,乗務員の運転支援や将来のドライバレス運転にシステムを適用することを目指す.
画像はいずれもJR東日本ニュースリリースから